My important place【D.Gray-man】
第2章 空白の居場所
ドドドドドッ!!!
激しい銃弾の嵐がその場を襲う。
私がいる場所だけじゃなく、神田のいる場所も含めて其処ら中一面に。
けれど銃弾が私達に当たることはなかった。
「足手纏いになるなつっただろ」
「ご、ごめん」
まるで一瞬で移動したかのように、神田が私の脇腹に腕を回して持ち上げたまま、大きな棺桶像の上に立っていたからだ。
それも束の間、ドサリとその場に雑に落とされる。
痛い。
「チッ、被ってやがったのか」
舌打ち混じりに神田が見下ろす先。其処には頭部だけをぐんにゃりと大きく歪めて、砲の形にしているわんこ達がいた。
最早わんこの面影はない。
ただの奇妙なスプラッタ映像のようだ。
「ひゅー! 速いねぇ、あのニンゲン!」
「初めてだなァ、オレ等の正体見破った奴」
ベキボキとわんこ達の体が嫌な音を立てて、ぼこぼこと不規則に波打つ。
小さな体にどうやって入り込んでいたのか、ずるりとわんこの皮を脱いだ"それら"が姿を見せた。
二足歩行のそれは人と同じだけれど、見た目は明らかに人とはかけ離れたもの。
それぞれ同じ姿のものはなく、奇妙に腕が筋肉質に盛り上がっていたり、頭部から刃物が突き出していたり。
人成らざる姿をして、人の言葉で話していた。
AKUMAだ。
言葉を話しているし、犬の皮を被って隠れる知識を持ってるなんて。
高いレベルのAKUMAなのかもしれない。
「全部で七体…情報より多い」
「たった二匹追加しただけだろ」
神田が背中に掛けていた刀の柄を握る。
スラリと鞘から抜けて、落ちていく夕日に黒い刃が光る。
日本刀の形を成したそれは神田のイノセンス。
装備型の対AKUMA武器──"六幻(むげん)"。
「すぐ終わる。お前は其処にいろ」
指先を黒い刃に神田が添えると、たちまちそれは銀色に輝く鋭い刃物へと変わった。
前のノアとの戦闘で一度大破したそれは、新しく改良されて硬度も破壊力も上がっている。
「きたきたァ! しかもォ御一人でェ!」
「偶には反応良い獲物じゃなきゃ、面白くないしなァ」
ひらりと棺桶像から飛び下りる神田に、AKUMA達が下品に笑う。
だけど数分後の目の前の光景は、不思議と予想できた。
今まで何度も任務でその戦闘は見てきたから。
神田は強い。