My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「はぁーい!お待ちどぉん!わくわくパラダイスセットよん♪」
「わーい♪」
「…なんだその頭が痛くなるようなネーミング」
食堂の受付でジェリーさんのセットメニューを受け取れば、隣に立っていたユウがそれこそ頭痛を抱えているような酸っぱい顔をしていた。
大きな専用トレイに詰め込まれているのは、ジュースが入った大きな紙コップ二つと山盛りのポップコーン。
ホットドックとポテト、おまけのチュロスまで付いてある。
どこからどう見てもわくわくセットでしょ。
「あ。もしかしてチュロスよりアイスがよかった?」
「違ぇよ阿呆」
「ぁたッ」
ピンッと軽く指で額を弾かれて、同時に持っていたトレイを奪われる。
「こんな体に悪そうなもんばっか食ったら太るぞ」
煩いな。
蕎麦ばっかり延々と食べ続けるのも充分体に悪いから。
「偶にはいいでしょ、ジャンクなものも。折角のシアター会なんだから」
「あらん、いいわねぇ二人で映画なんて♡あっまぁい恋愛映画でも観るのかしら?」
「いえホラーです」
「…色気ないわね」
楽しそうに受付カウンターから身を乗り出して首を突っ込んできたジェリーさんに笑顔を返せば、真顔で返された。
色気なくて結構です。
「それくらいあれば平気?まだ何か必要なら…」
「いい。これで充分だ」
「そう?じゃあ行こっか」
折角のシアター会だから、ユウととことん楽しみたい。
ということで、ジェリーさんにシネマフードを頼みに行けば返事一つで受け付けてくれた。
後は部屋を真っ暗にしてそれっぽくすれば、雰囲気出るかな。
街の映画館にでも行くような気分で、なんだかウキウキする。
「雪ちゃん雪ちゃん」
「なんですか?」
去り際にジェリーさんに呼ばれて、振り返れば来い来いと手招きしてくる姿が。
なんだろう?
大人しく顔を寄せれば、こっそりと耳元に近付くジェリーさんの口。
「ホラーならどさくさに怖がったフリして押し倒しちゃいなさいな♪」
……うん。
「あはは…頑張リマス」
流石にそんな度胸はないかな…怖い顔で睨まれるか、思いっきり呆れられそうな気がする…うん。