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My important place【D.Gray-man】

第46章 泡沫トロイメライ



「怪我は上半身くらいだから、もうこれで充分だよ。ありがとう」



負けを認めたユウを良いことに、緩んだ腕から抜け出して手早く服を身に付ける。
一番酷いのは首の火傷くらいだし。
首はもう自分で手っ取り早く手当てしたから、特にユウが気に掛ける傷はない。



「ん、」

「? なんだ」



着衣して肌が隠れれば、ほっと一息。
露出した格好でユウに抱かれるのって、色々と落ち着かないし。
そうして再びユウの目の前に座り込んだまま両手を出せば、怪訝な顔をされた。



「抱っこ」

「…は?」

「手当てはもうないけど、ユウとくっ付いてるの好きだから。もう一度、抱っこして」



抱っこなんて強請る言葉、凄く子供っぽいけれど。
でもこの二人きりの空間ならすんなりと甘えられた。



「抱っこって…ガキかよ」



そう言いながらも、促すように軽く腕を広げられる。
馬鹿にしているようで、少しそれとは違うユウの笑み。
もう見分けられるようになった。
これは、許してくれてる優しい笑みだ。



「へへ」



背中を向けてちょこんとユウの膝の上にお邪魔する。
緩くだけどちゃんと回される太い腕に、お腹に触れる大きな手。
普段はひんやりと冷たい肌なのに、こうして身を寄せると温かなユウの人肌。

背中から抱きしめられるのって、なんだか好きかも。



「ね、ユウ。今日泊まってく?」

「なんだそれ誘ってんのか」

「いや、そうじゃなくて…とは言わないけど、でも、そうでもなくて…っ」



変な意味で問い掛けた訳じゃないからっ
あたふたと返事に詰まれば、肩に乗る顔にくすりと笑われた。



「冗談だよ、馬鹿。お前がいいなら泊まってく」

「…ん、」



馬鹿って言われてるのに、馬鹿にされてる気はまるでしない。
寧ろ甘酸っぱい雰囲気に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

…こういう時間って、いいな。
こういう二人だけの時間って、凄く好き、かも。

もっと堪能したくなったから、もっとユウに傍にいて欲しくて。
卑猥な意味じゃなく、もっと触れ合っていたくて。
広い胸に背中を預けて、大きな手に自分の手を絡めて握り合わせた。



「じゃあまだ夜まで時間あるし、報告書も終わったし」

「時間潰しか?それなら組み手」

「はしません」



もうちょっと恋人らしいことしよう、そこは。


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