My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「ほら見せろって」
「大丈夫だよ、そこまでは…というか、この恰好も寒いんだけど…」
いくら室内とは言え、その…そういう目的じゃないのなら、体が熱くなる訳でもないし。
そんな中ずっと下着姿で上半身を曝しているのは、肌寒さがある。
「ぃっきしッ」
寒いと口にすれば体が連動したのか、くしゃみが一つ。
まじまじと私を見ていたユウは何を思ったのか、後ろから被さるように───…ん?
「これでいいか」
そう言ってユウが起こした行動は、私を包むように抱きしめることだった。
大きな手が寒さを和らげるように、私の腕を擦って───…って。
「…それ真面目にやってる?」
「それ以外何があるってんだよ」
「ぶふッ」
「オイ」
至極真面目な顔で応えるユウに堪らず噴いてしまった。
や、だって。
「服着せればいいだけなのに…っ」
手当ては終わったんだろうから、また着衣すればいいだけなのに。
なんでわざわざ人肌湯たんぽ。
凄い原始的。
「あははッツボった…!」
「てめぇ…」
思わずお腹を抱えて笑えば、ユウは私を抱きしめ痛い絞まる絞まってるそれ!
「ぎ、ギブギブ!こんな時に羽交い締めしてこないで…!」
「喧嘩売ったのはお前が先だろうが」
「違!嬉しかったんだよ、そこは!」
「つくならもっとマシな嘘つけ」
「本当だって!」
だって、
「誰かに世話焼かれる経験ってあんまりなかったから、なんか照れ臭くって。でもこういうのもいいなぁって思ったのッ」
無理矢理服を剥かれるのはちょっと勘弁したいけど、でも嬉しさはちゃんとあった。
過去にこうして親身に世話された経験なんて、クロス元帥くらいしかなかったから。
「………」
そうして本音を吐き出せば、途端にユウは黙り込んだ。
緩む腕に、首を捻れば不服そうな顔が見える。
「チッ」
軽い舌打ち一つで背く目。
あ、この仕草は…多分、諦めたんだろうな。
私との意見のぶつかり合いで折れる時に時々見せる仕草だったから。
「ユウ?」
「お前、卑怯だぞ」
「? 何が」
「…なんでもない」
いやだから何が。
そう問い掛けてもユウはそれ以上応えてくれなかった。
よくわからないけど…勝った?私。