My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「…どんな感じなんだ」
「?」
どんな感じ?
「ノアのその能力ってやつに染まるのは」
やがてぼそりと問われた内容は、これまた珍しい内容だった。
「前に一度、覚醒しかけたことがあったろ」
「あ、うん…」
まじまじと近くにある顔を見つめれば、ふいと視線が逸らされる。
いつも真っ直ぐに見てくるユウにしては珍しいもの。
…もしかして、不安、なのかな。
自分のことである私にとっても未知なるものだから、ユウにとっては更に不可解なものなのかもしれない。
…本当は、色々と気にしてくれているんだ。
「自分の中で何かが変わるのか」
「…よくは、わからないけど…大丈夫だよ」
ユウの部屋で朝方、白い影に襲われて覚醒しかけた時。
色んな怨念が脳裏に浮かんでは、呑み込まれていくような感覚に陥った。
あれをそのまま突き進めていれば、自分はどうなってしまったのか。
わからない。
だけど確かな恐怖はあった。
それでも、これだけははっきり言える。
「私は私だから。何も変わらない」
離していた背中を広い胸板に寄せて、ユウに身を預ける。
構えていた体の力を抜いて、微笑み掛けた。
私は私だよ。
この想いは何も変わらないから。
「心配しないで」
想いを優しい音色に乗せれば、逸らされていたユウの瞳が再び重なる。
あと数cmの距離。
何も言わずとも、そのまま自然とお互いの唇が触れ合った。
そっと触れ合うだけの微かなキス。
それでもその行為一つで、胸が満たされる。
想いを感じて、生まれる絆。
体を繋げていなくても、充分心で繋がっている確かな感覚だ。
「……今わかった」
「何が?」
ゆっくりと顔を離して、息をついたユウが微かに頷く。
わかったって、なんのこと?
「昼間にお前が逆ナンした理由」
逆ナン?
「あ。チャオジー?」
「地下に幽閉されていた時と同じだ。お前のそういう所は感心する」
「…本当にそれわかったの?」
私がチャオジーを逆ナン…じゃない、チャオジーに声を掛けた理由。
確かに独房にいた時に同じようなことは言ったけど…。
「"思い出さなかったら教える"ってお前言っただろ。それなら以前に話したことがあるってことだ」
「………」
…よくそんな些細な言葉覚えてたね…流石。