My important place【D.Gray-man】
第17章 蓮の湖畔で君を知る
「あ」
休日二日目の朝。
教団の食堂でいつものようにジェリーさんに頼んだ朝食を貰って、適当に席に着こうとした。
その時、広い食堂の隅に見知った背中を見つけて思わず足を止めた。
私と同じで休日を貰っている為、見慣れた団服じゃなくチャイナ風の私服姿で。長い髪はいつものように一つにまとめている、男性の後ろ姿。
いつもなら見かけても声なんて一切かけなかったけど。
なんとなく、自分の朝食が乗ったトレイに視線を落として暫く考えた後、その背中に足先は向いていた。
「おはよう」
トレイを手に、横顔が見える距離まで近付いて声をかけてみる。
ちらりと向いた顔は、いつもと同じく無表情。
じっとこっちを見たかと思うと、私の視線を辿るようにその方角に視線を向け…て、待って待って。
「いやあの、神田に言ったから。おはよう」
「あ?」
「だから、おはよう」
再度繰り返せば、今度は黒目がまじまじと私を見てくる。
物珍しそうな表情付きで。
まぁね。
こんなふうにプライベートで声をかけたことなんて、なかったから。
「…ああ」
だけど神田から返ってきた言葉はそれだけ。
相変わらず、素っ気無いというかなんというか。
「隣、いい?」
「…は?」
「だから、隣。私も此処で食べていいかな」
気にせず空いた席を指差せば、またもまじまじと顔を見られる。
一人を好む神田だから、許しを得られるかはわからなかったけど。
「なん」
「待て雪!」
「お前ちょっとこっち来い!!」
「うわっ!?」
だけど神田が何か言葉を発し終える前に、私の体は強い力で引っ張られた。
ずるずると引き摺られて、あっという間に神田から引き離される。
「っバズ? 皆も…っ何急に」
「何ってそれはオレらの台詞だ!」
「どうした雪、変なもん拾い食いでもしたか!?」
見上げれば、私の腕や肩を掴んでいるのはファインダー仲間の皆で、何故かその顔は一同に真っ青。
どうしたの。