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My important place【D.Gray-man】

第16章 鳴かないうさぎ



「ノアって…あの、ノア?」

「千年伯爵のな。ノアの一族には、額に十字模様の聖痕があるんさ。こう、一列に」


 前髪を掻き上げて、自分の額を一直線になぞりながら説明する。

 まさか。

 そんなラビの言葉は、すぐに私の脳内で否定された。


「それ以外には? 何かある?」

「うーん…オレが知ってる情報じゃあ、当てはまんのはそれだけかなー…」


 まさか。
 そんな訳ない。


「そっか…」

「なんでそんなこと知りたいんさ?」

「うん。ちょっとね」


 持ってきていた灯りを手に、背を向ける。


「ありがとう、ラビ。私もう行くから。あんまり夜更かし、し過ぎないようにね」

「あー、おう…」


 顔だけ振り返って礼を言う。
 見送るラビはまだ不思議そうにしていたけど、それ以上追求はしてこなかった。






























 暗く広い教団の廊下を、灯りを手に歩く。
 コツコツと、私の足音しか響かない静寂の中。


「…まさかね」


 まだ少し痛む額から手を離して、一人ぼやく。

 ノアの聖痕。
 確かに言われればそうだ。
 ノアの一族は皆同様に、その額に十字架のような聖痕を持つ。
 でもそこに結び付かなかったのは、きっとそうじゃないから。
 ノアの聖痕はラビが言うように、額を一列に並んだ模様のような痕。
 今の私みたいな、ぽつんと二つだけ浮かんだ傷跡じゃない。

 それはまるで言い訳のようにも思えたけど。
 首を振って、嫌な予感は頭から追い出した。

 まさか。

 私の親はエクソシスト。
 こうして此処で働いている私も、教団に身を捧げているのに。
 そんな私がノアだったりなんかしたら。



「…滑稽過ぎて笑える」



 まるで、陳腐な喜劇だ。



















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