My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「わたくしは監視役ですのよ!何忘れたフリなんてしてますの!?部屋に戻るのでしょう!」
「ぐぇッ!い、痛…!」
案の定プッツンきたテワクが、ぷんすかと火山の噴火のように怒りを露わにしながら私の首のチョーカーを掴んだ。
そのまま強い力で引っ張ってくるもんだから堪らない。
ちょ、それ駄目だって。
マダラオの所為で更に首の火傷悪化してるんだから…!
そんなに乱暴に扱わないで痛い!
そして首も絞まってるから!
「ちょっとあんた!いくらエクソシストだからってそんな乱暴許されないわよ!」
「えっ…」
必死に周りに助けを求めようとしたら、予想外にも口を挟んでくれたのはクロエだった。
え…ま、まさか…助けようとしてる?
やっぱりクロエとは仲良くなれそう…!
「折角のカモ…仮にも神田様の女なんだから!」
……ちょっと待って。
今、カモって言った。
思いっきりカモって言った。
確かに、相場なんて知らないけど結構な値段で薄い本買わされた気はするけど…。
「放しなさいよ!」
「煩い小娘ですわね。邪魔しないでくれませんこと?」
「あんただって小娘でしょーが!」
「う、ぐぐ…っひ、引っ張らないで絞まる…!」
だから絞まってるってば…!
そして凄い痛いんだってば!
なんでクロエも私を引っ張るかな!?
右には私のチョーカーを掴んだテワク。
左には私の腕を掴んだクロエ。
二人に左右から引っ張られれば、首がキリキリと悲鳴を上げる。
「ほ、本当にトぶ…ッ」
このままじゃ意識があらぬ方へと飛び兼ねない。
クロエの力は弱くても、テワクの力は一般女性より遥かに強い。
両手で必死にチョーカーを押さえたまま、詰まる息に目の前が一瞬霞んで見えた。
「おい」
その時、聞き覚えのある声が何処からともなく響いた。
「何してんだ」
「ああ良かった、神田さんがいてくれて。止めて下さい」
「チッ」
神田?
今、神田って言った?
霞む目で、廊下の角に立つイザベラとユウの姿をぼんやりと捉える。
そういえば途中からイザベラの姿が見えなかったけど…もしかして、ユウのこと見つけてくれたの、かな…。