My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
(…そういえば、)
改めて見れば、テワクの容姿を輝かせているのは、何も造形の整った顔だけではなかった。
ぱっと目を惹くのは、地毛かパーマか、ゆるふわに巻かれた見事なブロンド。
量も長さも十二分にある髪は、毛先まで輝きが失われていない。
こうも美髪に保つのは、決して容易ではないはずだ。
他にも、ボネールとは別の意味で目元を覆う長い睫毛にふっくらと赤く彩られた唇、リンク達と同じであるのに額の二つの紅黒子でさえもテワクのものとなれば気品良く見える。
ありのままの姿で美少女と謳われているリナリーとは、また違う型の美少女。
「…その髪留め、マダラオのと似てるね」
長い前髪を頭の上で縛り留めているのは、エスニック風の飾り紐。
マダラオやキレドリが髪飾りとして身に付けているものにどことなく似通って見えた。
「っ」
(あ。)
何気なく発した言葉だった。
しかしその雪の言葉に、テワクの顔にさっと差したのは朱色。
頬紅とは違う赤みに、感情が吹き込まれるテワクの表情。
思わず雪の目も丸くなる。
「ぁ、後は自分で綺麗になさい!わたくしにまで汗の臭いが移りますわ!」
「あ。」
勢いよく顔を上げたかと思うと、テワクの次の行動は素早かった。
泡だらけのスポンジを雪に押し付けると、しっかり嫌味も残さず吐き出す。
「いいこと!?5分で出て来なさい!5分ですわよ!」
捨て台詞のような言葉を投げ掛けたかと思えば、荒々しくバタンッと閉じられる個室のドア。
まるで小さな嵐の如く。
雪はただただぽかんと、照れを隠すブロンド少女を見送る他なかった。
「…何あれ…ツンデレ?」