My important place【D.Gray-man】
第16章 ソレイユ.
「……」
暗く広い教団の廊下を、灯りを手に一人歩く。
コツコツと、私の足音しか響かない静寂の中。
「…まさかね」
まだ少し痛む額から手を離して、一人ぼやく。
ノアの聖痕。
確かに言われればそうだ。
ノアの一族は皆同様に、その額に十字架のような聖痕を持つ。
でもそこに結び付かなかったのは、きっとそうじゃないから。
ノアの聖痕はラビが言うように、額を一列に並んだ模様のような痕。
今の私みたいな、ぽつんと二つだけ浮かんだ傷跡じゃない。
それはまるで言い訳のようにも思えたけど
首を振って、その嫌な予感は頭から追い出した。
まさか。
私の親はエクソシスト。
こうして此処で働いている私も、教団に身を捧げているのに。
そんな私がノアだったりなんかしたら。
「…滑稽過ぎて笑える」
まるで陳腐な喜劇のようにしか、思えない。