My important place【D.Gray-man】
第16章 鳴かないうさぎ
「雪?」
名前を呼ばれて、考え込んでしまっていたことに気付く。
はっとして顔を上げれば、不思議そうにこっちを見てくるラビがいて。その目は興味深そうに、じろじろとこっちを見てきた。
「ふーん?」
「何?」
「いんや。やっぱユウと仲良いんさなーって思って」
はい?
「急に何言い出すの」
「だってさ。こうしてユウのこと調べてんのは、知りたいって気持ちがあるからだろ?」
「…任務仲間だから知っておこうと思っただけだよ」
「それだけの為に、わざわざ立ち入り禁止の本棚で夜中に調べものなんてするさ? フツー」
にこにこ笑ってるけど、真意を突いてくるラビの言葉には隙がない。
普段はチャラけてるけど、人一倍頭も回るし人間観察も得意だから、隠し事なんかを見破るのは得意なんだと思う。
ラビのそういうところは少し苦手だった。
蓋をしている奥底の自分まで、いつか見破られてしまいそうな気がするから。
「それを言うならラビもでしょ。ブックマンの仕事の為に、こうして夜中まで文献探して記録して。それと同じだよ」
取り繕って生きてきたから少しだけわかる。
ラビもブックマンとエクソシストの狭間で生きているから、どこか周りに一線引いている時がある。
私は私情込みだけど、ラビは仕事として割り切って生きている、そんな感じ。
だからヘビーだなんて思う過去を知っていても、フランクに神田に接して付き合えるんだろう。
「私も同じだよ。今後の任務で支障をきたさないため」
神田への思いを無闇に誰かに吐露する気はない。
最低限のことだけ告げて、重い資料を棚に戻す為に両手で持ち上げながらラビに背を向けた。
「…そーいう顔には見えなかったけど」
「何?」
少し高い位置にある棚に、背伸びしながら資料を戻す。
その際中にぼそっと後ろで小さく呟かれたラビの言葉は、聞き取れなかった。