• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第46章 泡沫トロイメライ



ボロ負けファインダーズなど視界に入っていない神田は、真っ直ぐにブックマンだけを睨み続けていた。



(あれを取り返したら、汗を流しに行くか)



睨み付けているのはブックマンではない。
その手で奪われてしまった、歪な髪紐だった。
いつかに雪から貰ったそれを、易々と組み手の合間に奪われる訳にはいかない。

ぐ、と拳を握り脇に添える。
片足を下げると静かに身を構えた。

先程よりも緊迫した空気に気付いたのだろう。
ブックマンも口元の笑みを消すと、指に絡めていた髪紐を握り拳を作り上げた。

ぴり、と乾いた空気が立つ。



「あそこにブックマンがいるってことは、雪も此処にいるのかな」

「それは今すぐわかんねぇけど…ユウがジジイにボコられんのは興味あるかも」



盛大に神田に殴り潰され野次を飛ばすファインダー達と、ラビも等しき存在。
興味を宿した目を対峙する二人に向けるラビに、リナリーは堪らず苦笑した。
ぶっきらぼうで不器用な幼馴染は、何かといつも誰かしらから恨まれ妬まれている気がしてならないからだ。

彼に人間サンドバックに利用されていた雪もまた然り。
今でも美形をよく思わないのは、神田に打ち込まれてきた拳の存在が大きいだろう。
それでも神田を"そういう"対象として見られるようになったのだから、そんな雪を凄いと思うし世の中は不思議だと感じる。



「ゆくぞ!御主の顔に黒星を付けてやろうぞ、神田!」

「寝言は寝て言え!」



小柄なハンデをものともせず、風のように広場を駆けるブックマン。
易々と神田の背後を取ると、体に回転を掛けながら飛び膝蹴りを繰り出した。
避けるのではなく甘んじて打撃を受ける体制で、神田が片足を軸に体を反転させる。
そのままブックマンの蹴り目掛けて己の拳を叩き付ける。



───ゴゴ…



「「!?」」



否。
お互いの打撃は相手に触れる前に体制を崩し乱れた。
突如床を揺らす地鳴りのような響きに。

/ 2637ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp