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My important place【D.Gray-man】

第46章 泡沫トロイメライ



ぱさりと、頭の上で縛っていた神田の長い黒髪が舞い落ちる。
理由はブックマンの手元にあった。
老人の皺の寄った指先に絡め取られているのは、半端に千切れた紅色の髪紐。
華麗に神田の手捌きを読み打撃の嵐を避けたブックマンの指は、既に神田の頭に定着している歪な髪紐をするりと解き取ったのだ。



「…そいつを返せ」

「ほっほ♪そろそろどちらが真のポニーテールか決めようぞ!」

「チッ。負かす」



奪われた髪紐越しにブックマンを睨み付ける神田の目は鋭い。
しかし教団の中でも長寿者であり深い経験値を持つブックマンには然程効果はないらしい。



「凄いであるブックマン!鬼の神田に一歩も引けを取らんとは…!」

「か、神田先輩強いっス…」



ラビ同様、神田にやられたのだろう。
ぼこぼこに腫れ上がった顔で屍の山の中から身を起こすは、エクソシストのクロウリーとチャオジー。

屍が山のように積み上がる中、いつも最後まで立ち続けているのは神田だけだった。
しかし今はそうではない。
きっちりと結ばれた髪を乱して神田が睨み付けているのは、髪紐という戦利品を頂いたブックマン。

今まで誰も勝つ見込みのなかった景色に希望の光が差す。
そこに望みを託したいのだろう、屍と化していたファインダー達も必死に痛む体に鞭打ち身を起こした。



「っやれ…やってくれブックマン…!」

「俺達ファインダーの敵を…!頼む!」



血と涙を味わい呑み込み、腹の底から搾り出される切実な主張。



「いっそのこと気持ちよくボコボコにしてくれ!特に顔!!!」

「そうだ!やられろ神田ァア!!!!」

「潰れっちまえ!!!」

「そしてオレらの痛みをわかれってんだー!!!!」



余程鬱憤が溜まっていたのだろう、一斉に中指を天井に突き立てて主張という名の罵声を飛ばす。
既にただの野次と化しているような気もしない。

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