My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「神田にとって組み手で相手を薙ぎ倒すのは、趣味の一つなんだと思うよ。前にストレス発散になるって言ってたし」
「なんさその趣味…もっと平和的な趣味見つけた方が良いとオレは思います」
「今更無理でしょ、あの神田なんだから」
膝に両肘を付きながら、広げた掌に顎を乗せて苦笑する。
そんなリナリーの瞳は、次の獲物を探す鬼神こと神田を見つめたまま。
やられるのが嫌ならば向かっていかなければいいのに、とも思うのだが。
ラビ含め屍となっている彼らもまた、毎度潰してくる神田を仕返してやりたいと思って挑んでいるだろう。
血の気が多いのは、神田だけではない。
「そういえば昔、雪のことも都合の良いサンドバックだって言ってたなぁ…」
「マジか。女をサンドバック扱いなんてユウにしかできねぇんじゃね一回痛い目に合えば良いとオレは思います」
ふと思い出した、昔に幼馴染が不意に零したぼやき。
それをリナリーが口にすれば、ラビの顔が渋る。
「だよね。その時は私も怒ったんだけど、聞く耳持たずな感じで。雪に対して容赦なかったからなぁ…神田は昔から」
「一回雪に嫌われれば良いとオレは思います」
「…ラビって、さ」
「?」
「雪のこと好きよね」
「ッごほ…ッ!?」
神田にやられた訳でもないのに、激しく咳き込み頬を打たれたかのように顔を背ける。
そんなラビを、リナリーはまじまじと見て笑った。
「やっぱり。前々からそうかなって薄々思ってたけど」
「っ…それ言うならリナリーだって、アレンのこと好きだろ」
「っ!?な、何言って…ッ」
「赤くなったさー、かーわいー♪」
「からかわないでよッ!」
ラビの胸元を掴みぶんぶんと振るリナリーは、普段の冷静さなどどこにも見当たらない。
それこそが盛大な解答となっているのだが、指摘すれば神田よりも強力な足技を喰らわされることだろう。
ヘラヘラと笑いはするものの、ラビはそれ以上の指摘は止めることにした。
これ以上顔が潰れてしまっては堪らない。