My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
父の所有物って。
父の適性イノセンスってこと?
「貴様の手で破損した結晶体は、次の適性者を見定めることなくヘブラスカの中で長い眠りについた。一度破壊されても他のイノセンスに影響を与えることはなかった。故にそれは"ハート"ではないと上から見做されたのだ」
教団とノアの探し求めているイノセンスは一つだけ。
"ハート"と呼ばれるイノセンス。
それが全てのイノセンスの源であり力となる。
「だから貴様の枷として鎖に繋いだ。万が一に滅されても問題は無い」
目の前がスパークする。
光で目が眩んで、マダラオの顔もはっきりとは見えない。
明らかにイノセンスの力が増しているのがわかるのに、痛みは少しだけ弱まった気がした。
「…っ」
小さな十字架に模された結晶体は、幼い私の手で昔に破壊したイノセンスだと言う。
あの時、壊れてしまったと思ってたのに。
あの時、失くしてしまったと思ってたのに。
まだ存在していたなんて。
「…ッ…」
まだ、生きていたなんて。
まだ、教団に利用されていたなんて。
「───…」
目の前がばちばちとスパークする。
眩しくてもう何も見えない。
相反するように痛みが消えていく。
マダラオに首を締め上げられているのに。
肌を貫く痛みも、息を詰まらせる苦しさもない。
「おいキレドリ。あいつァ───」
「肌が…褐色に変化してる」
「兄様!危険ですわ、離れて下さいませ!」
「ッ結界を張ります、下がれテワク!」
眩しくて眩しくて、真っ白に塗り替わった世界。
まるで、あの教団の地下での実験室で父のイノセンスを破壊してしまった時みたいに。
何も見えないけれど、何か見えた気がした。
白い、人影のようなものが───
「おと、さ…」
───許スナ
───怒リヲ
…ああ、また
手は届かない