My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
摩擦はただの"きっかけ"に過ぎなかった。
「〝白羽解朮〟」
「!? ぁ、あ、が…ッ!」
赤羽のようにチョーカーだけが激しい熱を持ち肌を焼いたりはしなかった。
だけどそこから発せられた微かな摩擦が、たちどころに全身へと広がる。
広がると同時に摩擦が痛みへと変わる。
肌を焦がし引き裂くような痛み。
全身を貫かれているかのようだ。
「自身の中で暴れている"力"を感じるだろう。それを我が物にしろ」
混乱する頭の中、マダラオの声が聞こえる。
だけどそれに従う余裕なんて私にはなかった。
痛い。
痛みで気が変になりそうだ。
こんなの到底我慢できる痛みじゃない…!
「抗え。歯向かえ。貴様の敵は目の前だ」
「が、ああッぁあぁあ…!」
「マダラオ、白羽はまだ彼女には危険です!」
「なら何時使えと言うのだ」
「ノアの覚醒が起こり兼ねない…!」
「それは好都合。早く戦力として戦前に立ってもらわなければならん」
「ですが…!イノセンスまで破壊されてしまったら…!」
痛い。
痛い。
煩い。
痛い。
頭の隅でマダラオとトクサの声を拾う。
自分の咆哮で音は遮断され、しっかりと把握なんてできない。
「元々使えない結晶体であったのだから問題無いだろう」
なのに。
「一度貴様の手で壊されたイノセンスなど」
何故かその声ははっきりと聞こえた。
私の、手で、壊された?
「あぐ…ッぅ、あ…ッ!」
目の前がスパークしてる。
違う、実際に目の前で光が衝突し合い弾けてる。
私の体を纏うイノセンスの力。
この力を放ってる結晶体が半端なものなんて。
抱かずにはいられなかった疑問になんとか焦点を目の前のマダラオに合わせる。
交じり合う視線。
答えを求める私に気付いているかのように、マダラオは淡々と変わらない様子で口を開いた。
「同じ痛みを与えられてわからんとはな」
同じ…痛、み?
「嘗ての貴様の父の所有物だというのに」
───え