My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「───いぃい痛い痛い!」
「だからなんだ」
「ぎ、ギブ!ギブアップ!」
「敵と対峙した時に貴様は白旗を挙げるのか。そうすれば見逃して貰えるとでも思っているのか?」
「っそう、は思ってないけど…ッほ、骨が折れる…ッ」
「関節の一つや二つ、失くさないとその甘い考えは捨て切れないだろう」
「首の骨折られたら死にますが!?」
ぎしぎしと無理矢理に反らされた関節が悲鳴を上げる。
案の定、いつも以上に冷たいマダラオとの組み手は容赦がなかった。
背後からマウントを取られて、顎を掴まれ海老反りの形に捻られる。
関節って、どう見てもこれ首の関節しかないよね。
このままボキリと折られたらあっという間に昇天なんだけれど。
床に倒れ込んだまま、反らした視界に入るのは暗い天井。
吹き抜けの形に作られた天井に、幾つもの大広間と繋がっている第一修練場に比べれば、随分と窮屈な天井に見えた。
「ナヨナヨしいヤツだ」
「俺でも勝てる」
「いやはや、根性が足りてませんねぇ」
「折られてしまえばいいんですわ」
ちょっと。
最後とんでもない言葉がサラッと混じってたけど。
傍観者と化してるトクサ達一同は、当たり前のように私に手を差し出そうとしてくれない。
せせら笑うゴウシに無表情なキレドリ、溜息をつくトクサに殺意混じる美少女テワク。
本当、鴉って色々と性格に問題のある人多いと思う。
目の前で人が殺されかけてるのに、顔色一つ変えないってどういうこと。
「ん…ッの!」
「っ!」
助けてくれないなら自分でどうにかしないと。
咄嗟に顎を掴んでいた手に思いきり食い破る勢いで噛み付けば、一瞬マダラオの力が緩んだ。
その隙を突いてマウント状のマダラオから抜け出すと、両手を床についてうつ伏せのまま背後を蹴り上げる。
「ッ」
マダラオの顎にヒットさせるつもりで振り上げた踵は、素早く跳び退かれ狙った所に当たらなかったけれど、確かにその顔を掠めた。
ぱたた、と宙を舞う数量の血。
「兄様…ッ!」
「おっと、中々やりますね」
「マダラオに血を見せるとはなァ」
「俺なら避けられる」
煩い傍観組は無視ッ
急いでマダラオと距離を取れば、額に片手を当てて己の血を確認する姿が見えた。
き、綺麗なお顔に傷を付けてしまった…怒るかな。