My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「報告書を一緒に仕上げるって、お前言ったよな。なら今から部屋に同行してもらおうか」
ガタンと多少荒めに椅子を引いて立つユウの誘いは、最早恋仲同士の欠片もない。
何、同行って。
何この今から取調室にでも行く警察署みたいな雰囲気。
今から根掘り葉掘り尋問でも受けさせられるんですか。
人情話でもしながらカツ丼出してくれるんですか。
もうお腹はいっぱいですが。
「っ…私この後用事が」
「言ったよな、自分から」
「用事」
「言 っ た よ な」
「ぁ、ぅぅ…」
「何呻いてんだ。行くぞオラ」
「わ、わかった行くから!服引っ張るのやめて!」
無言であったって威圧半端ないんだから。
プラス声で脅されれば強力なGで押し潰されそうだ。
強く掴まれた肩口の服に、早足で歩き出すものだから、体は斜めに傾いてずるずると引き摺られる。
そういう所本当相変わらずだよね!
「ちょっと、それやり過ぎなんじゃ───」
私とユウの関係を日頃見慣れていないエミリアが、止めに入ろうとしてくれた時。
「失敬、」
間に入り込んだ手は、全くの別人だった。
「え?」
「あ?」
重なる私とユウの声。
きょとんとしたものと、訝しげなもの。
向けた目線は同じ所。
しっかりとユウの手首を掴んで止めていたのは、一緒に食事なんてしていなかった男。
いつの間に傍にいたのか。
気配なんて気付かなかった。
「残念ですが、それはなりません」
にこにこと胡散臭い顔で笑う、それは狐男のトクサ。
「彼女は今から、楽しい楽しい総合訓練の時間ですので」
…げ。