My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「…フラれた…」
「ドンマイ、ねーちゃん」
「気分が乗らなかったのよ、きっと」
涙を称えて食堂の隅で項垂れる。
結局、熱烈な私の誘いをチャオジーは受け取ってくれなかった。
最後には真っ赤な顔で跳ぶように逃げて消えたチャオジー。
慰めてくれるティモシーとエミリアの気持ちは嬉しいけど、しくしくと落ち込む心は晴れない。
少しくらい歩み寄れるかもしれないと思ったんだけどな…。
「何がフラれただ、人の目の前で逆ナンなんざしやがって」
「むグっ」
急にがしりと大きな手に顎を掴まれる。
強制的に上げさせられた視界に映り込んだのは、口元を歪ませているユウのドアップだった。
眉間にはくっきりと深い皺。
うわ…怒ってるな、これは。
やっぱり負の感情は真っ直ぐ過ぎるくらいド直球だ。
「ひゃくなんらないほ…あゆひよりほ…」
「どこが歩み寄りだってんだよ、キスなんて迫りやがって」
「せまっへないほ!ゆうほうのさそいらよ!」
「いつからお前の友好の手段はセクハラになったんだ答えによってはシバくぞァあ?」
うわ、息継ぎを全くしてない。
かなり怒ってるな、これは。
シバかれるのは勘弁だけど、疾しい気持ちなんてないから譲れない。
私にも私の思いがあるんだから。
「らっへ、いきへくっへひめはんらよ。ゆふと、いっひょに」
「は?」
「わらひはここへいきへくっへひめはの。らからそらひひゃいへないわらひのもんらいらから」
「……お前」
私はユウと生きてくと決めた。
この、教団で。
ノアであっても、この人と生きていくと決めたんだ。
だから自分の立場は自分で変えていかなきゃならない。
チャオジーのことも、そう。
目を逸らしちゃいけない、これは私の問題だ。
もう取り繕って仮面を被って生きていた、ファインダーの自分とは違うから。
真っ直ぐにユウを見つめて主張すれば、その目は僅かに丸くなった。
顎を掴む力が緩む。
…思い、伝わってくれたかな。
「何言ってるかさっぱりわかんねぇ」
「ならこのへをはなひへくらさいまへんか!」
誰かさんが顎鷲掴んでるからでしょーが!