My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「───"解"」
特に長々とそれらしい言霊を唱える訳でもない。
でもその一言で、どんなに刺激を与えてもウンともスンとも言わなかったチョーカーが、呆気なくカチリと外れた。
心持ちか、首が軽く感じる。
すぅ、と吸い込んだ空気にほっと力が抜けた。
「顎を上げて下さい。後は動かないこと」
「はいはい」
自室のベッドの上で座り込んだままトクサと向き合う。
果たしてイノセンスに焼かれた首がどんな状態なのか、鏡を見ていないからわからない。
でも周りの反応を見る限り、そこまで酷い状態ではないんだろうな…多分。
だって私自身、そこまで我慢できない痛さじゃないし。
けれど予想外にも、その傷跡を手当てしてくれるトクサの手つきは迅速でいて優しかった。
痛みをあまり感じないよう、手早く消毒をして患部に抗生物質の軟膏を塗る。
すーすーして息がし易くなる。
手当てに慣れていないユウの手つきとは大違い。
手先器用そうだもんなぁ…鴉って、なんか。
「…ねぇトクサ」
「なんですか。沁みるなどと子供のような苦情は聞きませんよ。我慢して下さい」
「それは大丈夫なんだけど、」
だってトクサの手当て、優しいから。
だからふと疑問が湧く。
こうして傍にいれば、否応なしにも見えてくるトクサの人物像。
嫌な所もいっぱいあるけど、なんだか…それだけじゃない気がする。
リンクさんを相手にしていた時といい。
私の知らないトクサの一面は、きっとまだ沢山あるんだろうな。
「なんでそんなにいつも喧嘩腰なの」
いつかのユウに問い掛けたことがあるものと、同じことを問う。
「一緒にAKUMAと戦う身なんでしょ?なんでそんなにエクソシストを毛嫌いするの」
「…エクソシスト嫌いではありません。使徒嫌いなだけです」
「同じでしょ」
エクソシストは"神の使徒"と呼ばれている。
だからトクサも、嫌味ったらしくアレン達のことを"使徒様"なんて呼んでるんだろう。
「いいえ、同じではありません。貴女もそうでしょう」
「?」
私?
軽く顎を上げた体制で首を傾げれば、即座に顎を掴まれた。
がしりと、それはそれは強く。
「動かないで下さいと言いましたが?」
「う。ごめん」