My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「最初からそうして聞き分け良くいればいいものを。手間掛けさせないで下さい」
「そういう言い方するから反発したくなるんでしょ。トクサの方こそもう少」
「ねーちゃん!」
「おぅふっ」
やんやと地味に言い合いながら廊下を進もうとすれば、はたまた別の人物に足止めを喰わされた。
文字通り、今度は真後ろから衝突…否、抱き付かれて。
「あんまりねーちゃんイジメんなよなッ怪我人なんだぞ!」
「おっと、小さな騎士(ナイト)が現れてくれたようですよ。よかったですね」
だからそういう言い方が棘あるんだってば。
小さな体でめいいっぱいいつも感情を表してくれるティモシーは、弟じゃなくても可愛げがある。
そんなティモシーにトクサの毒牙が掛からないようにしないと。
「ありがとうティモシー。私は大丈夫だから」
トクサの言葉を綺麗に無視して、振り返って小さな騎士に笑い掛ける。
「ほんとに?」
「うん。ティモシーこそ怪我がなくてよかったよ」
「それは神田のあんちゃんとねーちゃんがいてくれたからだって」
「私も?」
「おう!ツキカミのこと見捨てないでいてくれただろ」
ああ、そういうこと。
ニカッと太陽みたいな笑顔を見せるティモシーに和まされながら納得していれば、不意にぱちりと耳筋に静電気のようなものが走った。
いった、何。
「?」
「ツキカミもありがとーってさ!」
「え?」
耳朶を擦りながら振り返っても、其処には誰もいない。
首を傾げていれば、ティモシーが満面の笑みのまま……え、今の憑神?
「さっき、静電気みたいなのがパチって…」
「ツキカミがねーちゃんに触れたからだよ」
「……まぢで」
普段は霊体みたいな憑神だから、ティモシーの本体や他の体に取り憑かない限りは触れることも話すこともできない。
憑神の本来の姿も見たことないんだけど…ティモシー曰く"大人のオレ"だとか。
そんな霊のような憑神の気配を肌で弾くなんて…
なんていうか…その……うん…
「イノセンスに体が反応するなど、益々ノア化してきてますね貴女」
「………」
人が言い淀んだことをよくこうもはっきりと…それも思いっきり笑顔で。
本当、性格悪いこの鴉。