My important place【D.Gray-man】
第16章 鳴かないうさぎ
9年前のアジア支部・第六研究所。
其処で移植された脳の記憶を思い出した被験体ALMAの暴走により、人造使徒計画に関わっていた研究員46名が惨殺された。
そのALMAを止める為に、YUは体の再生機能が停止するまでALMAをバラバラに斬り刻み続けたという。
同じ境遇で生まれた、同じ存在であるALMAとYU。
「YU…神田、ユウ」
神田はどんな気持ちで、ALMAを壊したんだろう。
他人を寄せ付けようとしないで、まるで世界を嫌うかのように一人で立って生きている。
神田のそんな姿を思い出して顔が歪む。
以前なら、こんな感情湧かなかった。
人の抱えるものに大小なんてない。
それぞれがそれぞれ、何かを抱えて何かに縋って生きている。
希望も絶望も人それぞれ、それは他人が簡単に介入できることじゃない。
そんな他人の心を無理矢理こじ開けて入り込もうとすることは、一歩間違えれば大きな傷跡しか残さない。
それなら最初から触れないに限る。
私は私、あなたはあなた。
無駄に傷付け合うより、取り繕って生きる方が楽だから。
でも。
「傷付けるだけじゃ、ないんだよね」
自分を曝け出すことが、どんなに怖くて苦しくても。それだけじゃないことを私は知った。
望んだ人に認めてもらえることが、受け入れてくれることが、どんなに泣きたくなるくらい心を満たしてくれることなのか。私は知ったから。
支えたいだなんて、そんな大それたことは言えないけど。
あの人の傍にいたい。
一人で立って生きている、神田の隣に私はいたい。
それは確かな思いだった。