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My important place【D.Gray-man】

第46章 泡沫トロイメライ



「んだよ、強いかと思えば弱っちい。なんだテメェ?」

「さぁ…私もよくわかりません」



自分で自分のことがわかってたら、こんな苦労だらけの道歩んだりしない。

掠り傷一つ負ってないのっぺらぼうみたいな頭部を上げて、AKUMAが地面に付いていた片膝を持ち上げる。
被さる影が私の体をすっぽり覆い尽くした。
AKUMAの懐に飛び込んでしまっていたから、距離が近過ぎる。
呼吸音さえ感じ取れる目の前の巨大な壁に息を呑んだ。

ま…まずい。



「まぁいい、どうせテメェは死」

「解けた!解けたで姐やん!」



無数の目玉に見張られて下手に動くこともできない私の耳に、突如飛び込んできたのは憑神の歓声。
一瞬、AKUMAの気が後方の憑神に向く。
無数の目玉が私から逸れるその一瞬を、見逃さなかった。



「憑神走って!」

「へ?」



後ろに飛び退きAKUMAの懐から脱すると、即Uターンして全速力。
逃げるが勝ちとは素晴らしく正論だと思う。

憑神の間抜けな声に構ってる暇もない。
巨大樹から雨のように降り落ちてきていた葉は、既になくなっていた。
相反して、ぐらぐらと巨大な根っこが軋む振動は大きくなっていく。

もう時間がない。
巨大樹諸共、崩壊する。



「ま、待ちやっしゃ!」

「死にたくなかったら走る!」



子供の体だけどクラウド元帥の元で厳しくトレーニングを受けていたティモシーだから、体力はあるはず。
その証拠にティモシーの本体in憑神は息切れなんかしていない。
寧ろ私の前に飛び出さん勢いだ。

人間、死ぬ気になればなんでもできるってね。
あ、この場合は人間じゃなくてイノセンスか。



「だから逃がさねぇって言っただろぉがァアア!!!」

「ぁだッ!?」

「姐やん!」



場違いなことを考えてしまっていたからか。
急に足首を強い力で掴まれると、強制的に体に急ブレーキを掛けられた。

急に止まれないのは車も人も同じ。
バランスを崩して不格好に顔面から倒れてしまった。

い、痛い。



「ぁたた…」



よかった、下が土で…コンクリだったら鼻凹んでたかも。
それでも痛む鼻先を押さえながら顔を上げれば、ぬっと被さる大きな影。
ずん、と視界の中に鋭い爪を持った錆色の足が映り込む。

あ…これは、すごぶる、まずいかも。

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