My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「憑神動かないでッ!」
咄嗟に背負っていた結界装置を起動させると同時に、憑神へと向かって投げ飛ばしていた。
「ぎゃんッ!?」
「あ、ごめん」
だけど投げた結界装置は見事に憑神の頭にヒット。
くるくると目を回すと、あっという間に小さな体は倒れ込んでしまった。
あちゃあ…ごめん。
でもお陰で結界は憑神を取り囲むことができた。
これで簡単にAKUMAは憑神に手を出せないはず。
「おいアマぁ邪魔すんなよ!オレの折角のデザートがよぉお!」
「そんなもの食べたら絶対お腹壊すと思うけど。親切でやってあげたんだから感謝しなさいよね!」
イノセンスである憑神なんて食らったら、AKUMAは腹痛でも起こすんじゃないの。
まぁAKUMAの"食べる"って行為は"殺し"だから少し意味合い違うけど。
「ならテメェがデザートになってくれるんだろうな…!」
「それはごめん被ります!」
こちらへ飛躍しようとしているのか。
身を屈めてジャンプの体制を取るAKUMAに、待ってやる必要なんてない。
でも今すぐ此処から逃げ出す訳にもいかない。
迷う暇なんてなく、小さな光る穴に向かって腕を突っ込んだ。
「ぅっ…!」
眩い光の元に触れれば、ビリッと電流のような痛みが走る。
けど、それを無視して小さな原石を掴み取る。
腕を力任せに引き抜けば、青白い光が握った拳の中から微かに溢れていた。
やった…!
なんとかイノセンスは確保!
ゴゴ…
「…ん?」
「なんだぁ?」
思わず笑顔を浮かべたのは一瞬だけだった。
地鳴りのような揺れが、急に肌を刺激したからだ。
何事かと周りを見渡せば、それは忽ち大きな揺れに変わり、視界をぐらぐらと回し始めた。
ぱさりと肩に触れたのは、上から降ってきた一枚の葉。
見上げれば、見事に咲き乱れていた青々とした巨大樹の葉達が、一枚、また一枚と剥がれ落ちていく。
「うわ…」
剥がれ落ちゆく葉。
そして私の手に握られたイノセンスの原石が、さっきまでの強い光を弱め、細々と消えていく。
…凄く、嫌な予感しかしない。