My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「行くよ憑神。イノセンス確保しに行かなきゃならないから、私から離れないで」
「しゃあないなぁ」
「今はティモシーの体なんだから、ちゃんとついて来てよ?」
「イノセンス舐めたらあかんで、姐やん」
「舐めてなんかないよ」
舐めてなんかない。
寧ろ私には脅威的なものだ。
ノアメモリーなんて宿しているこの体には。
なのにこうして普通に憑神と会話している辺り、やっぱり世の中は不明瞭だなぁと思う。
「それでイノセンスの原石は何処にあんねや?」
「あの巨大樹の根元。さっき確認したから間違いない。ユウ達がAKUMAを引き付けてる間に手早くやるよ」
「ようそんなもんいつの間に見つけ───…て!待ちやっしゃ!」
「口だけ動かさずに足も動かす!」
憑神の言葉は待たずに、廃墟の屋上から飛び降りる。
AKUMA達に見つからないよう、裏側からこっそりと。
今回の任務はAKUMA討伐とイノセンス確保の二つ。
でもここまでAKUMAの数が多いとは思ってなかった。
仕方ないけど、エクソシストの手助けは待っていられない。
隙を見て手早くイノセンスを捕まえなきゃ。
建物のパイプ伝いに地面まで一気に下りると、廃墟の中で緑豊かに宿らせている巨大樹の下に向かう。
多分、元はこの町の中心部だったんだろう。
オブジェか何かを巻き込むようにして太い蔓や枝を張り巡らせた巨大樹が、其処を拠点に堂々と空へ向かって葉を広げていた。
周りは廃れた荒野のような地。
ここまで異様に一本の樹木だけが育つのは不自然だ。
そう睨んで現地に赴いてからずっと目を光らせていれば、案の定。
AKUMAが大量出現した時と同じくして、巨大樹の根元が微かに光を放っているのを見た。
たったそれだけの情報だけど、長年ファインダーをやってた勘が言ってる。
恐らくあそこに、私達が求めているものがあるはず。
「近くで見るとえらい迫力やなぁ…」
「やっぱり」
「何しとるん?枝なんて切って」
「見て憑神。この樹木、年輪はまだ幼い。十年くらいしか生きてないはずなのに、この育ち具合は異様だよ」
切った枝の切断面を見れば、年輪でその木の年齢はわかる。
何十メートルもある太い幹をしてるのに、この幼さは流石に可笑しい。
やっぱりイノセンスの影響を受けてたんじゃないのかな。