My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
『暢気に見物なんてしてないで、ちゃんと仕事して下さいませんかね?あの新人使徒様より使えませんよ貴女』
「はいはい、わかってます」
耳に取り付けた無線機から飛んでくる声が、チクチクと嫌味に刺さる。
相変わらずねちねちと…本当、小姑かって時々思う。
それでもトクサの言うことは正論だから、屈んでいた腰を上げてぶつりと結界装置を切った。
目線が上がって視野が広がれば、下でAKUMAと交戦してるユウとティモシーから少し離れた場所で、これまた戦闘に身を置いているトクサの姿が見える。
「消えろ、次から次へと湧いて出る害虫共め」
冷たい言葉を投げ放ち、目の前の巨大なAKUMAに奇怪な左腕を向けるトクサ。
一見して金属のような腕にも見える、人のそれとはかけ離れた形の腕に大きな掌。
AKUMAに翳した掌の中心にはブラックホールのような穴が在って、まるでゴミを吸い取る掃除機のように空間を歪ませつつ目の前のAKUMAの存在を吸い取った。
「なッなんだこ」
AKUMAの悲鳴も最後まで残さず、ぶつりと途切れる様は不気味だ。
本当にブラックホールなんじゃないかと偶に思う、あの腕。
〝サードエクソシスト〟
それがトクサ達、中央庁から来た緋装束の鴉達に付けられた名だった。
中央丁により"半AKUMA化"された存在だとか。
聞いた時は驚いたけど、こうして直接その実力を見ると実験は成功したように見える。
AKUMAの力を使ってAKUMAを倒す。
そんなこと考えもつかなかった…中央庁の考えることは私の想像を遥かに超える。
…まぁ、あのルベリエ長官が束ねてる組織だし。
私の力でさえも利用しようとしてるんだから、トクサみたいな存在が生まれるのも当たり前だったのかもしれないけど。
周りのAKUMAを一掃したトクサを見守っていれば、ふと上がる顔に───あ、目が合った。
いつもは瞑ってるように見える細い目を地味に開いて、こっちをじとりと見てくる。
やっぱり狐顔だなぁ…って違う。
このままだとまた小言向けられる気がする。
早く私は私の仕事をしよう。