My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
まるで長い長い時のような沈黙がお互いを包む。
緊張した面持ちで返事を待つ雪の前で、やがて彼が示したものは。
「…そっか」
少し、ほっとしたような笑み。
「ごめん、少し調子に乗りました。冗談、にしては笑えないですよね」
「…冗談だったの?」
「まぁ」
「"まぁ"じゃないよ!っもう…!さっきの雰囲気じゃ冗談なんて笑えないから!本気かと思った…っ」
「あはは、ごめん」
ぽりぽりと頬を指先で掻きながら笑うアレンは、いつもの穏やかな彼と変わらない。
やはりあの言葉は故意的なものだったのだ。
でなければ、彼が真剣にそんな誘いなどするはずがない。
(私よりずっと教団をホームだって、大事にしてるアレンなのに)
肩を怒らせ咎めながらも、同時に雪は安堵していた。
罰が悪そうに笑うアレンに、仕方ないと腕を軽く肘で小突く程度で済ます。
「アイタ」
「もう。やめてよね」
「だって妬けるじゃないですか。そんなに強い想い人がいると」
「だからって、今のアレンがそんなこと言ったら洒落にならないから。リンクさんがいたらこっ酷く怒られてたと思うよ」
「ブラックジョークですよ」
「……時々思うけど、アレンて可愛い顔して腹黒い所あるよね」
「そう?」
「そう!その笑顔!爽やかだけどなんか胡散臭い!」
「あははは」
「おい。何呑気に駄弁り合ってんだ」
その場の空気を止めるような低い声が響く。
同時に動いた雪とアレンの目は、細い路地裏の入口に向いた。
賑やかな街の明かりを遮断するかのように立っていたのは、黒いマントを羽織った長身長髪の青年。
「あ」
神田ユウだった。