第45章 10/31Halloween(番外編)

確かな笑みを見返して、雪の肩から力が抜ける。



「やっぱりアレンは優しいね」

「そう？」

「うん」



自分がノアであることを、きっとずっと雪より長い間悩み不安を抱えていたはずだ。
神田に縋った雪とは違い、彼は誰にも縋らなかったかもしれない。
儚くも優しい強さを持つアレン。
ほぅと息をつきながら、雪もやんわりとその手を握り返した。

神田とは違い、ほんのりと温かい手。
それは神田とは違い、別の意味でほっとさせてくれる。



「ノアへの未知の不安は、私も沢山あるけど…アレンを見てると、自然と身に力が入る」



優しいからこそ。
色んなものを背負い、それでも笑っているアレンだから。
そんな彼の優しさに、甘え過ぎては駄目だと思うのだ。



「力、湧きました？」

「うん。四六時中リンクさんに張り付かれてるアレンが、こんなに頑張ってるのに。少しトクサに監視されてるくらいで、ふらふらしてたら駄目だなぁって思った」

「ふらふらしてたんですか」

「心が、ね。少し。毎朝部屋のドア開けたらトクサがいるもんだから…」

「それは疲れますね」

「本当それ。アレンは凄いと思うよ。リンクさんと部屋も共有して、常に一緒にいるんだから。私だったら息が詰まるなぁ…まぁリンクさんはトクサと違って、ねちねち嫌味を言わな……くもないかもしれない」

「………」

「うーん、難しい境界線…って。ご、ごめんね」



つい愚痴のように零していた言葉は、アレンにはきついものだったかもしれない。
はっと我に返って雪が慌てて目を向ければ、透き通るような銀灰色の目はじっと静かに向けられていた。



「…雪」

「ん？」

「未知なる不安は沢山あるって言いましたね」

「うん」

「ノアになるのは、怖い？」

「…え？」



さらりと問われた言葉は、予想外のものだった。