My important place【D.Gray-man】
第15章 12/31大晦日
「そこのお嬢さん達! よかったら俺達と飲みに行かないかい?」
「…あ?」
そんな少しはマシに思えたその場の空気を壊したのは、知らない野郎二人組だった。
つか何度目だこれ。
女と間違えてんじゃねぇよ。
「誰が女だ」
「え? そこの美人のキミのことだよ」
「俺達も二人だけだからさー」
ドスの効いた声で応えても、そいつらは阿呆面を下げるばかり。
この年越しの空気で、まともな判断がつかないくらい馬鹿にテンションでも上がってんのか。
大体、見てわかんねぇのかよ。
邪魔すんじゃねぇ。
「生憎、先約がいる」
「わぷっ」
空いていた片手も回して、月城を自身の体に押し付ける。
そもそもこいつを代用にしたのは、こういう時の為だったか。
「先約? ああ、その子も一緒で大歓迎だよ」
「そうそう。女の子二人だけじゃ寂しくない?」
「俺は女じゃねぇつってんだろ」
「か、神田っ腕! 腕締まってる! ギブギブ!」
思わず力が入って、腕の中の月城が悲鳴を上げる。
抜け出そうとするその体を逃がさないように押し込めた。逃げんなコラ。
月城を腕に押し込んだまま辺りを伺う。
周りは未だに抜け出せないくらいの人混みで溢れ返っていて、何処を見てもハグやらキスやらしたい放題。人目なんて誰も気にしちゃいない。
仕方ないと、睨んだ視線を周りから月城に変える。
至近距離にあるそいつの顔は、俺を見るなり体を竦ませ顔を青くした。
…別にお前を睨んだ訳じゃねぇよ。
「…動くなよ」
「え?」
月城の顎を、固定するように片手で掴む。
「神田?」
ぽかんと見上げてくるマヌケ面に応えることなく、そのまま短い距離を詰めるように顔を寄せた。
「なん──…!?」
驚き狼狽える様を無視して、縮めた距離に吐き出す白い息が重なる。
そのまま動かないよう固定した月城の口に、唇で触れた。