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My important place【D.Gray-man】

第15章 12/31大晦日



 返ってきたのは沈黙だった。
 予想外だったのか、俺を見上げる月城の目が丸くなる。
 ぽかんとしたマヌケ面で。

 んだよ、テメェが欲しがったんだろ。


「ぶふッ」

「オイ」


 途端、月城は肩を震わせて吹き出した。
 テメェ…殴るぞコラ。


「いや、だって…っ舌打ち混じりにおめでとうとか…っなんか神田らしいなって…っあははッ」


 余程ツボにでも入ったのか。目尻に浮かんだ涙を拭って、楽しそうに月城が笑う。


「…うっせぇよ」


 一瞬本気で殴ってやろうかと思った気持ちが、あっという間に削がれていく。
 なんだか馬鹿らしくなって、溜息混じりに体の力を抜いた。
 "俺らしい"と言うだけ、こいつは俺のことを見ているのか。なんとなくそんな思いが浮かんだから。


「でも、ありがとう。なんか今年一番の、良い思い出になりそう」

「まだ一日しか経ってねぇぞ」

「あ。」


 嬉しそうな顔で阿呆なことを口にする。
 いつもなら呆れる月城の姿に、何故か不快感はなかった。

 思い出なんて、そんなもんを教団で作る気なんてない。





『私の人生は一度だけだから。後悔したくないの』





 ただこれが、こいつにとって思い出になるなら。このうざい人混みの中にいる意味も、少しはあるような気がした。


「今年もよろしくね」

「精々、任務で足引っ張るなよ」


 腕の中で見上げてくる月城の顔を見下ろす。
 今年もこいつの顔を見ながら、一年過ごすのかと思えば。



 案外、悪くはないかもしれない。











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