My important place【D.Gray-man】
第15章 12/31大晦日
✣
何処を見ても、人の群。
何処を見ても、馬鹿みたいに騒いでは笑って。
何処を見ても、抱き合ったり口付け合っていたり。
うざいこと、この上ない。
「はぁ…」
思わず漏れた溜息はこいつにも聞こえたのか、微かに腕の中の体が揺れた。
視線を下げれば、群に揉まれた際に脱げたんだろう、いつもはフードで隠れている頭が見える。
視線は感じてんだろうが、腕の中の月城は一切動く気配がない。直立不動で突っ立ったままだ。
ただその体は、力が抜けたように俺に凭れていた。
なんだって、こんなことになったんだ。
さっさとこの頭の沸いたうざい集団から抜け出したいのに、思いのほか身動きが取れなくて立往生。
つーか、動けばすぐ誰かがハグしに掛かろうとする。
うぜぇんだよ、そういうことは同じ人種同士でやりやがれ。
そうは悪態ついても、後から後から尽きないハグの催促に、気付いたらこいつを代用に使っていた。
「…はぁ」
もう一度溜息をついて、視線を周りに戻す。
軽く抱いた体は思った以上に小さくて、簡単に腕の中に納まった。
こんなふうに触れたことなんてなかったから割と驚いた。
相変わらずのファインダーマントの、その下の体は思った以上に…柔い。
「……」
ああ、そうか。
こいつ女だもんな。
当たり前のことなのに、改めて感じる意識。
見ていないと余計に肌で感じる所為か。触れている背中も、肩も、腕も。どことなく柔くて、小さい。
「…神田」
不意に月城が俺を呼ぶ。
それ三度目だからな。
わかってんだろうな。
また呼んだだけとかほざいたら、今度は殴るぞ。
「だから、なんだよ」
そう思いながら下げた視線。
見上げてくる目とぶつかって、思いのほか顔が近いことに気付いた。