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My important place【D.Gray-man】

第15章 12/31大晦日(番外編).



「おお、綺麗なお姉さんだ! おめで──」

「他所でやれつってんだろ」


 にこやかに両手を広げる男性に凄みのある顔で威嚇して、神田の手は私の背中に回された。


「俺の相手はこいつだ、間に合ってる」


 …はい?


「ちょ、神…っ」

「黙って大人しくしてろ」


 しっかりと背中に回された腕は、私の体を胸元に押し付ける。
 密着する体に、サラサラの神田の長い黒髪が私の頬に触れた。

 え、ちょっと。
 ちょっと待って。
 なんで私は、神田にハグされているんでしょう…!?


「な、ん…何…っ」

「ただの代用だ。じゃねぇとまた余計な奴らが寄ってくんだろ」


 ………あ、成程。
 無駄に周りからのハグキスコールを防ぐために、神田は私をハグ代用に使ったらしい。
 …私は便利代用人形ですか。


「……」


 でも確かにその効果はあったらしく、周りは相変わらずあちこちハグキスが起こっていたけど、私達に声をかける者はいない。
 もしかして…これ、周りのイチャイチャしてる恋人同士と同じに見られてるのかな。

 ……。

 …いや、ないな。
 多分女の子同士のハグとでも思われてるんだろうな。
 神田の顔なら女性に間違われても仕方ないし。
 もしくは家族とか。


「…あの、」

「なんだよ」

「…いえ、」


 顔を上げずに声を出す。
 押し付けられてる自分の頬は、神田の胸元。
 強くはないけど、確かに回されている腕からほんのり感じる体温。

 誰かに抱きしめられる記憶なんて、あまりなかったのと…神田相手なんて、天地が引っくり返ってもないと思ってたから。


 変にドキドキする。


 こっそり見上げた神田の顔は適当に辺りを見ていて、その表情はいつもと変わらない。
 私だけ変にドキドキしてて、なんだか恥ずかしくなった。

 心臓の音が、伝わりませんように…っ


 トクン、


 ──あ。


 トクン、


 聞こえたのは、押し付けられた胸元から。
 変に緊張で体は強張って直立姿勢の形で身動き一つできなかったけど、耳に届いたその音は確かな神田の心音。

 生きてる音。


「……」


 じんわりと伝わる体温に、トクントクンと聞こえる音はなんだか酷く安心した。
 …心地良いって言うのかな。

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