My important place【D.Gray-man】
第15章 12/31大晦日
『さぁ、残り時間5分を切りました! 1分前にはカウントダウンをお願いします!』
スピーカーから興奮気味のアナウンスが届く。
もうそんな時間なんだ。
「カウントダウンだよ。数えないと」
「お前こういうことで、はしゃぐタイプだったのかよ」
「楽しいことは好きだよ。普通に」
一人でまったりするのも好きだけど、ファインダー仲間やラビ達と騒ぐのも嫌いじゃない。
私がいつか両親の処へ逝った時、思い出話くらい聞かせてあげたいでしょう?
「私の人生は一度だけだから。後悔したくないの」
私はこれだけ幸せだったんだよって、誰より大切な二人に伝えたいから。
笑って見上げた神田の顔が、じっと私を見下ろす。
その顔は何も言わなかったけど、眉間にいつもの皺は見当たらなかった。
「でも数えねぇからな」
「…そこは譲らないんだね」
でも、その意思は固いらしい。
そして案の定。
『60! 59! 58!』
カウントダウンが始まっても、周りが合唱のように数え出しても。腕組みしてその場に立つ神田は、口を閉じたままぴくりとも動かさなかった。
素晴らしく固い意志です。
「30、29、28っ」
代わりに私が隣で数える。
カウントダウンが終わりに近付くと、周りの人々の熱が増す様も肌で感じてくる。
その雰囲気に呑まれて胸が躍った。
『10、9、8、』
キラキラ輝くネオン。
『7、6、5、』
皆の声が一つになって。
『4、3、2、』
ミラーボールに表示された数字が、全ての桁を0にする。
『1、0!』
それが合図。
「「「Happy new year!!!!」」」
わぁっ!と上がる歓声。
夜空に大きな音を立てて上がる沢山の花火。
ミラーボールからは、一斉にカラフルな紙ふぶきが吹き出す。
その紙ふぶきの一つ一つには、人々が書いた願いが書かれていて、まるで願いの雨のようだ。
更には一斉に掛かる賑やかな音楽に、周りのネオンがより強く輝く。
それは大都市に恥じない、大きなお祭りだった。