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My important place【D.Gray-man】

第15章 12/31大晦日



 人が幸せな光景を見ているのは嫌いじゃない。
 こっちまで幸せな気分を、貰える気がするから。


「…と、いうか」


 離れていた時はただの人の群に見えたけど、近くで見るとわかる。
 あちこち混雑しているけど、よくよく見れば家族連れだったり恋人同士だったり友人同士だったり。誰かと共に、仲睦まじく今か今かとカウントダウンを待っている。
 オープンな国である所為か、人目憚らずイチャついてる恋人さん達もいるけど…こういう光景は、嫌いじゃない。

 ただ、ちょっぴり。その人達の中で私だけ、一人なのは…寂しいけど。
 まぁ仕方ない──




「月城っ」

「わ…!」




 急に強く腕を引かれた。
 ぐらりと傾いた自分の頭が、後ろにあった胸板に当たる。


「なん…っ神田?」


 驚き振り返って見えたのは、真っ黒な団服に身を包んだ、真っ黒な瞳。
 あれ、なんで。


「参加しないんじゃ…」

「お前見失って捜す方が後々面倒だろ」

「…確かに」


 この人込みじゃ、年越しが終わってもすぐには抜け出せなさそうだし。


「目の届く所にいろ」

「…うん」


 単に面倒だから来てくれただけなんだろうけど。
 それでも一人じゃなく、こうして一緒に誰かと過ごせることがなんだか嬉しかった。

 いつもはコタツにみかんだけで、気にすることなく一人年越ししてたのに。
 これはニューヨークマジックかな。


「今年も残り13分だよ」


 神田の隣で見上げる、大きなミラーボールの時間は【13分】。


「年を越えたらHappy new yearって言うんだよ」

「それくらい知ってる」

「でも言わないでしょ」

「……」


 出た、肯定の沈黙。


「…誰に言うってんだよ」


 視線を逸らして、面倒臭そうに神田が呟く。
 …前ならこんなこと言わなかったけど。


「じゃあ、私に言ってくれる?」


 教団でゾンビ化事件があってから、近くに感じられるようになった神田との心の距離。
 それ故に出た言葉かもしれない。


「というか今は私しかいないし」


 けれど一応フォローとして後付けしても、心底嫌そうな目が向くだけ。
 本当、興味ないというか嫌うよね。イベント事。

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