My important place【D.Gray-man】
第15章 12/31大晦日(番外編).
そして案の定。
『60! 59! 58!』
「……」
カウントダウンが始まっても、周りが合唱のように数え出しても。腕組みしてその場に立つ神田は、口を閉じたままぴくりとも動かさなかった。
素晴らしく固い意志です。
「30、29、28っ」
代わりに私が隣で数える。
カウントダウンが終わりに近付くと、周りの人々の活気も増す。
その雰囲気に呑まれて胸がワクワクする。
『10、9、8、』
キラキラ輝くネオン。
『7、6、5、』
皆の声が一つになって。
『4、3、2、』
ミラーボールに表示された数字が、全ての桁を0にする。
『1、0!』
それが合図。
「「「Happy new year!!!!」」」
わぁっ!と上がる歓声。
夜空に大きな音を立てて上がる沢山の花火。
ミラーボールからは、一斉にカラフルな紙ふぶきが吹き出す。
その紙ふぶきの一つ一つには、人々が書いた願いが書かれていて、まるで願いの雨のよう。
一斉に掛かる賑やかな音楽に、周りのネオンが一層輝く。
それは大きなお祭りだった。
「神田っHappy new year!」
こんな興奮の渦の中で、冷静でいる方が無理だと思う。
思わず弾んだ声で呼びかける。
すると相変わらずの無表情のまま、それでも神田は僅かに口を開いた。
「っ!?」
だけどその口が声を発す前に、私の視界は何かで埋め尽くされた。
「Happy new year!!」
「わ、わ…っはいっ?」
ぎゅうっと強い抱擁。
抱きしめてくるその腕は、知らない男性のもの。
興奮気味に私を抱きしめたその人は、満面の笑みでそう言うと私の頬に顔を近付けて──…あ。
ちゅっと、掠める柔らかい何か。
「……」
頬キス、されました。
何をされたのか一瞬わからず思考を止める私に構うことなく、あっという間にその体は離れると別の近くの人を抱きしめにいった。
…ああ、成程。
「……流石アメリカ」
オープンな人柄というか、オープンなコミュニケーションというか。
オープンセクハラが許されるというか。