• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第15章 12/31大晦日(番外編).



「参加しないんじゃ…」

「お前見失って捜す方が、後々面倒だろ」

「…確かに」


 この人込みじゃ、年越しが終わってもすぐには抜け出せなさそうだし。


「目の届く所にいろ」

「…うん」


 単に面倒だから来てくれただけなんだろうけど。一人じゃなく、こうして一緒に誰かと過ごせることが…なんだか嬉しかった。

 いつもはコタツにみかんで、気にすることなく一人年越ししてたのに。
 これはニューヨークマジックかな。


「今年も残り13分だよ」


 神田の隣で見上げる、大きなミラーボールの時間は「13分」。


「年越えたら、Happy new yearって言うんだよ」

「それくらい知ってる」

「でも言わないでしょ」

「……」


 出た、肯定の沈黙。


「…誰に言うってんだよ」


 視線を逸らして、面倒臭そうに呟く神田。
 前ならこんなこと言わなかったけど…


「じゃあ、私に言ってくれる?」


 教団でゾンビ化事件があってから、近くに感じられるようになった神田との心の距離。
 それ故に出た言葉かもしれない。


「というか、今は私しかいないし」


 だけどそう後付けしても、心底嫌そうな目が向くだけ。
 本当、興味ないというか嫌うよね。


『さぁ、残り時間5分を切りました! 1分前には、カウントダウンをお願いします!』


 スピーカーから興奮気味のアナウンスが届く。
 もうそんな時間なんだ。


「カウントダウンだよ。数えないと」

「お前こういうので、はしゃぐタイプだったのかよ」

「楽しいことは好きだよ、普通に」


 一人でまったりも好きだけど、ファインダー仲間やラビ達と騒ぐのも嫌いじゃない。
 私がいつかあの二人の処へ逝った時、思い出話くらい聞かせてあげたいでしょう?


「私の人生は一度だけだから。後悔したくないの」


 私はこれだけ幸せだったんだよって、二人に伝えてあげたいから。


「……」


 笑って見上げた神田の顔が、じっと私を見下ろす。
 その顔は何も言わなかったけど、眉間にいつもの皺は見当たらなかった。


「でも数えねぇからな」

「…そこは譲らないんだね」


 でもどうやらその意思は固いらしい。

/ 2638ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp