My important place【D.Gray-man】
第15章 12/31大晦日
「来年まで後どれくらいか神田知ってる?」
「知らねぇよ」
「2時間56分だよ。ほらあそこに、大きく掲げてあるでしょ」
ちらほらと小さな雪化粧が舞う夜空。
喋れば息がたちまちに白い吐息となって上がる。
そんな寒い寒い夜に、高い建物の屋上で神田と二人。
指差した先には、この都内にある有名な大通りが見えた。
目を惹く高い建物の数々に、キラキラとネオン輝く巨大なミラーボールのようなものが飾られていて、その中心には大きな数字でタイムリミットを記している。
今日は12月31日。
今年を綴る、最後の日。
「周りも凄い活気付いてるし。あそこのカラフルな色、全部人込みだよ」
大都市の代表格ともなる此処はニューヨーク。
行事なんて無関係な黒の教団の中じゃなく、アメリカの大都市で年越しを迎えられるのはとても貴重なことかもしれない。
ただし。
「それより周りに集中しろ。追っているAKUMAを見失ったらどうすんだ」
「…ですよね」
それが仕事でないなら、だけど。
そもそもつい先日、コムイ室長の作った厄介な薬の所為で教団内がゾンビパニックさながらの騒動に巻き込まれたっていうのに。
どうにか生き残り…じゃなかった薬に侵されなかった神田と私…は駄目だったな。最終的にはゾンビになっちゃったし。
とりあえずその場に駆け付けてくれたバク支部長と蝋花さんの手助けもあって、教団壊滅事件を回避できたっていうのに。
結果に貢献したであろう、労わなければならないはずの神田(と、私も一応入れさせて下さい)がなんで、また急遽大晦日のニューヨークでこんな任務に就かなきゃいけないのか。
『非常に頼み難いんだけど、急な任務ですぐ動けるのは君達しかいないんだよね…ホラ、皆病み上がり状態で全回復はしてないからさー』
白々しく自分の頭に氷のうを乗せて、具合悪そうに頼んできたコムイ室長を思い出して顔が歪む。
病み上がりって何。原因はコムイ室長でしょうが。
それを言うなら私だってゾンビウイルスに侵されたんだから病み上がり組でしょなんで駆り出されてるの。
どうせ神田と組めるファインダーで都合の良い相手が見つからなかっただけだろうけど。
違った、都合の良い駒が私なだけなんだろうけど。
「絶対にこの任務が終わったら休み申請してやる…」