My important place【D.Gray-man】
第15章 12/31大晦日(番外編).
「来年まで後どれくらいか、神田知ってる?」
「知らねぇよ」
「2時間56分だよ。ほらあそこに、大きく掲げてあるでしょ」
ちらほらと雪が降り、喋れば息が忽ち白くなる。
そんな寒い寒い夜に、高い建物の屋上で二人。
指差した先には、その都内の有名な大通り。
キラキラとネオン輝く巨大なミラーボールが飾られていて、其処には大きな数字でタイムリミットを記していた。
今日は12月31日。
今年を綴る、最後の日。
「周りも凄い活気付いてるし。あそこのカラフルな色、全部人込みだよ」
此処はニューヨーク。
行事なんて無関係な黒の教団の中じゃなく、アメリカの大都市で年越しを迎えられるのは、とても貴重なことかもしれない。
…ただし。
「それより周りに集中しろ。追っているAKUMAを見失ったらどうすんだ」
「…ですよね」
それが仕事でないなら、だけど。
「なんでこんな日まで任務尽くし…それもAKUMA退治…コタツでみかん食べながら、カウントダウンしたい…」
がっくりと肩を落として項垂れる。
只今私は、神田と絶賛AKUMA退治の任務中。
ちらほらと降る粉雪は綺麗だけど、任務遂行中の身としては視界を悪くする邪魔なものでしかない。
私達には、風景を愛でる暇もないんですか…。
「んなもん、帰ってからやりゃいいだろ」
「今からじゃ、多分カウントダウンには間に合わないよ」
「別に日付が変わるだけだろうが。なんでそんなことにいちいち拘る」
「拘るというか…記念すべき日じゃない? やっぱり、年が変わるっていうのは」
相変わらず色んなことに興味のない神田だけど、それは年越しにまで及んでいるらしい。
神田らしいと言えばそうだけど…。
「それにほら、神田お蕎麦好きでしょ。日本の年越しは"年越し蕎麦"っていうのを食べる風習があるんだよ」
「……」
あ、興味持ったみたい。
黙ってるけど、否定しないのはそういう意味。
何度も任務に組まされる中で、なんとなく神田の沈黙の意味はわかるようになってきた。