My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「仕方ないですね。…して、月城雪」
「何」
「なんですその恰好は。妙に女ぶってて気持ち悪…素敵ですよ」
「………(今気持ち悪いって言った。絶対言った!)」
脇目も振らずスタスタと歩いていた雪の足が止まる。
何故こうも、人の神経を逆撫でするような言い方をしてくるのか。
同じに中央庁の出で同じに丁寧な物言いではっきりと駄目出しをするリンクと似ているようで、トクサは根本的な何かが違う気がする。
「私、女ですけど」
「知ってますよそんなこと。何言ってるんです、頭大丈夫ですか?」
「え、なんで私が可笑しな発言した空気みたいになってんの?明らかに可笑しいのそっちだよね?」
「何を仰いますか馬鹿ですか。褒めたじゃないですか」
「いや気持ち悪い聞こえたから。はっきり聞こえたから。なんで格好の一つや二つで、そんなこと言われなきゃなんないの。アンタは私の小姑ですかっ」
「ただの日常会話ですよ、何を馬鹿なことを」
「日常会話で罵倒され過ぎてる感が否めない!馬鹿馬鹿言い過ぎだから!」
「朝からぎゃんぎゃん煩いですねぇ。欲求不満ですか?あ、セックスレスですか」
「はい出た卑語!涼しい顔ですぐ卑語連呼すんのやめなさいアンタは!」
呆れ混じりに溜息をつきながらも、煽ることを忘れないトクサに、ビシリと指差しながら雪の忠告が飛ぶ。
それもまた見慣れた光景になりつつある。
「おっはよーさんっ朝からすげぇ会話してんなー」
そんな騒がしい空気を止めるかのように、のしりと雪の背後から伸し掛かる体重。
肩に回された腕に振り返れば、ぱっと明るいオレンジ色が飛び込んできた。
「ラビ」
顔を見なくても、慣れ親しんだ声でわかる。
表情を伺う前に名を呼べば、予想通り。
明るいオレンジ色の下にあったのは、垂れ目の隻眼を持った青年だった。