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My important place【D.Gray-man】

第45章 10/31Halloween(番外編)



「おはようございます、電気鰻さん」

「………オハヨーゴザイマス」



折角前向きに持っていけた思考を、こうもバキリと朝から折られるとは。
自室の扉を開けて待ち構えていた顔を目の前に、雪はテンションが急降下していくのを感じ取っていた。

にこにこと胡散臭い笑顔を貼り付け挨拶してくる男を前に、感情の無い声色で挨拶を返す。



「その嫌味な呼び方止めてって何度も言ってるでしょ」

「おっと、すみません。つい貴女の顔を見ると"あの時"のことを思い出してしまって」

「………」

「顔が怖いですねぇ。ビリビリきます」



じとりと睨んでも、にこにこと胡散臭い笑顔は変わらない。
そんな、中央庁の鴉でありサードエクソシストという特殊な存在に当たる人物───トクサを前に、雪は一層眉間の皺を濃く刻んだ。

頭部の右サイドで一つにまとめた、特徴的な若葉色の髪型。
マダラオやテワクと同じ、目尻には薄い隈取のような模様に、額には二つの縦に並ぶ赤い印。
常ににこにこと笑っている顔は細い切れ目に、まるで真意を見せようとしない狐のような男だ。

嫌味ったらしい言い方は、彼の癖らしい。
と気付いたのは、雪の教団内での監視役として彼が任命された初日からだった。
ねちねちねちねちと、笑顔で人の心を抉るようなことを言ってくる。
それがこのトクサという人間の特性だった。



「その呼び方止めないなら、ルベリエ長官にアンタの無能っぷりを報告するけど。まともに監視の一つもできないんで、他の誰かに変えて下さいって」

「それは人聞きの悪い。貴女も中々に根性腐ってますねぇ」

「毎日神経擦り減らしてくる相手に、気遣いも何もあったもんじゃない」



最初こそは気遣いもしていたが、この口の悪い狐を相手にしてすぐにそんなものは無用だと悟った。
きっぱりと冷たい物言いで返しながら、構わず廊下を歩み進める。
そんな雪の隣に当然のようについて歩くトクサの姿は、教団では見慣れた光景となりつつある。

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