My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
ルベリエと取引を交わした日。
フェイに伝えた通りに地下の独房へと顔を出したコムイに、雪は己のノアの事情を全て伝えた。
死を恐れ黙秘していたこと。
教団に敵意はないこと。
ノアの覚醒には至っていないこと。
はっきりとそれらのことを伝えれば、コムイはすんなりと雪の意思を受け止め理解してくれた。
それから数日後には閉じ込められていた檻から解放され、手首や足を繋いでいた重い枷からも解放された。
代わりに首輪という枷を付けられたが、それでも表向きはファインダーとして変わらず働けるよう、コムイは雪の居場所を残してくれた。
ノアの事情を知っているのは、教皇や中央庁、教団上層部とエクソシストのみ。
教団の大半の団員は何も知らない。
そのことは雪にとって大きな救いだった。
やはり敵意はないと示しても、ノアは教団にとって敵対する存在。
ノアとしての雪を知ってしまった彼らの向けてくる目が、意思が、どんなものなのか。
仲間として過ごしていた以前と全く変わらないものではないことは、雪にもわかっていたからだ。
「……お腹減った」
悶々と考え込んでしまっていたらしい。
くぅ、と小さく鳴る空腹を示す音に、下腹を擦る。
一人で考え込んでいても、到底良い方向へは向かわない。
首輪は付けられたが、ノアだとしても教団で変わらず生きられるのだ。
それだけで充分大きな進歩だと言えよう。
腹は減る。
食欲もある。
それだけ、体も心も生きようとしている証拠。
(そういえば、今日はユウも非番だったっけ)
細く詰まってしまった喉を開けてくれた存在を、ふと思い浮かべる。
寝間着を脱ぐ手元を見れば、左腕には臙脂色の数珠。
確かに繋がっている証を視覚に感じられることに、自然と口元は緩んだ。
彼を想うだけで強くいられる。
非番ならゆっくりと共に過ごせる時間を確保できるかもしれない。
約束はしていないが、見掛けたら声を掛けてみよう。
そう前向きに思いながら、ふと手に取ったのはリナリーと買い物に出掛けた際に購入した服。
「…これにしようかな」
明るい服は、それだけ気持ちも明るくしてくれる。
偶にはリナリーらしくお洒落してみるのも、悪くはないかもしれない。