My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
細かな装飾の施された小さな十字架。
光の具合や角度によって、淡く煌めき色を変えるそれは、美しい結晶体にしか見えない。
しかし雪の目にはとてもそんな鮮やかなものとしては映っていなかった。
詳細は不明だが、科学班の技術も取り入れ特別に改良したものだとか。
人間時の雪には無害なものだが、ノアとなれば凶器に変わる。
"それは貴女のノアとしての能力を抑える為のものです。無闇に能力を晒して振り回すのは、貴女としても望むべきことではないでしょう?合理的な抑制ですよ"
そう微笑みながら説明するルベリエの言葉は、確かに同意できるものではあった。
元より拒否権など自分にはないだろう。
狗になると承諾した時点で、立場は理解している。
故に文句の一つも付けることなく、雪は大人しくイノセンスの首輪を受け入れた。
「…はぁ」
毎朝鏡を見る度に鬱々としていても仕方ない。
零れた溜息を呑み込む。
(まぁ"これ"のお陰で、リンクさんみたいに張り付く監視はいないし。利点もあるよね)
首輪で始終見張られているようなものだから、アレンを監視するリンクのように始終誰かに張り付かれることは、できれば遠慮願いたい。
そう提案した雪の要望を、すんなりとルベリエは通してくれた。
起床から就寝まで一日中、床も共にして誰かに張り付かれるなんて、到底息が詰まる。
アレンには悪いが、自分はごめんこうむりたい。
そういう意味では首輪も悪いものではないと、頷きながら雪は無理矢理自分に言い聞かせた。