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My important place【D.Gray-man】

第45章 10/31Halloween(番外編)



✣ ✣ ✣ ✣


同日、朝。
いつもの体が馴染んだ時間帯に起床。
ぱちりと開いた目に映ったのは、暗く冷たい石造りの天井ではない。
見慣れた自室の天井に、無意識にほっと息をつく。
まだ少し慣れないのは、檻から解放されてそう月日は過ぎていないからか。

今日は非番の身。
ファインダーとして内勤の仕事もなかった。
頭の中でスケジュールを引き出しながら、起こした体をベッドから下ろす。
とりあえず朝食に行こうと箪笥から着替えを取り、姿見に自身を映し出した。

褐色の肌はない。
金色の瞳もない。
額の聖痕だって見当たらない。
見慣れた"人間"である自分の姿。

ただ一つ、見慣れないものが首元に微かに光る。

細い黒のチョーカー。
二重に巻かれた銀のペンダントチョーカーには、角度によって色が変わる、きらきらと鮮やかな小さな十字架が下げられていた。
一見してシンプルでお洒落なアクセサリーにも見える。



「………」



しかし首元を巻くそれを見つめる雪の目は、暗いものだった。

恐る恐る指先でチョーカーを撫でる。
痛みはない。
弾き返される感覚もない。
しかしそのチョーカーの正体を知っているからこそ、じわりと指先は嫌な汗を掻く。






"狗には首輪を付けねばなりませんね"






ルベリエと檻の中で交わした取引。
そこで彼の狗になると承諾した雪に、薄く嫌な笑みを貼り付けたルベリエが提案したものが、それだった。
最初は単なる悪趣味思考かと思ったが、理由は合理的なものだった。

一見してシンプルなチョーカー。
しかしそれは、ノアとしての雪を縛る為の首輪。

中央庁で特別に作られた首輪には、雪の体温や心拍や発汗状態など、身に付けた者の身体状況を読み取る機能が備え付けられている。
それによって雪の体が異常を来した時に、迅速な情報を読み取ることができるのだ。
そして何より重要なのは、きらりと控えめに淡く光る小さな十字架。
その十字架こそ、何よりも雪の瞳を暗くする原因。



(首輪というより、爆弾みたいなもんだよね…これ)



銀の鎖で繋がれたそれは、雪の肌を焼いたものと同じ───イノセンスの結晶体。

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