My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「そういえば今日は鍛錬しないの?」
「うん。ししょーは任務に出てるし…今日一日、お菓子貰いに回ろうと思ってたから」
なんとか顔の熱を退かせ、ベンチへと座り直す。
「なら今日の分の勉強は?ちゃんと終わらせたの?」
「ぅぐ……教団でまで教師面すんなよ…」
「あーら。私は医療班に務めてるけど、あんたの専属家庭教師も担ってるんだから。クラウド元帥お墨付きの」
「……ぅぐ」
文句は言わせないとばかりに言い切るエミリアには、ティモシーも返す言葉がない。
まだ入団し立てのティモシーは、一度も任務へと出たことがない。
エクソシストとして任務を任されるには、まだ鍛え方が足りないらしい。
運動神経は高い方だが、それでもティモシーは9歳の子供。
配属された部隊はクラウド・ナイン元帥。
弟子を思いやりながら厳しさも見せる彼女の元で、ティモシーは日々一人前になる鍛錬を受けていた。
そしてまだ幼いティモシーには勉学も必要なことだと、クラウドの命でエミリアの勉強会に強制参加を余儀なくされている。
そんな厳しいクラウドも、今は教団不在の身。
がしかし、昔からティモシーを見てきたエミリアからは逃れられるはずもなかった。
「た、偶にはいいだろ…ハロウィンくらい。明日、今日の分までやるからさ」
「はぁ…全く」
「………でもどうせこの分じゃ、他の皆もハロウィン忘れてるだろうし…楽しむのは、無理かもしんねぇけど…」
入団してからは、厳しいクラウドの下で鍛錬も勉学も続けてきた。
ベンチに背を凭れて深い溜息をつくティモシーに、それ以上強い言葉は向けられずにエミリアは唇を噛んだ。
孤児院で働いていた頃は、行事を忘れるガルマーを叱っていた身。
なのに今では自分が、ガルマーと同じになっているのではないか。
(駄目ね。ティモシーの為に此処へ入ったのに。私がちゃんと、この子を見ていなきゃ)
きゅっと胸の前で拳を握る。
戦闘へと身を投じる幼い彼の為に、医療班への入団と専属の家庭教師を希望したが、理由はそれだけではない。
ハースト孤児院を救う為に自分自身を差し出した、そんなティモシーを教団(ここ)で独りにさせない為に。