My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「………」
「ティモシー?黙ってたんじゃわからないわよ」
不思議に思って問い掛ければ、返ってきたのは沈黙。
やはりいつものやんちゃで明るい彼とは違う姿に、エミリアの顔に不安の色が浮かぶ。
やがて俯いたまま伸びる、ティモシーのまだ幼さが残る手。
きゅっと握ったのは、エミリアの医療用エプロンだった。
「ティモシー?」
やはり何かあったのか。
心配した面持ちで顔を寄せ、もう一度呼び掛けるエミリアに、ティモシーはやっと口を開いた。
「トリック オア トリート」
「……え?」
小さな声で投げ掛けられたのは、聞いたことのある単語。
その言葉に一瞬呆けたものの、すぐにピンときた。
そうだ、今日は10月31日。
ハースト孤児院では当たり前のように行事のお祝いをしていたが、教団では仕事の多忙さですっかり抜けてしまっていた。
「…エミリアもかよ…」
そんなエミリアの反応は、どうやらティモシーの期待していたものではなかったらしい。
彼女のエプロンを握りしめたまま、ぐすんと悲しげな声で鼻を鳴らしたのだった。