My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「───それは事実なの?」
「事実か、と言われましても…」
「オレ達も記憶がさっぱりでして」
「でも囚人は変わらず鎖に繋がれた状態ですし、食事以外に変わった所は一切ありませんでした」
なんでも、ユウの話を聞いたコムイ室長の指示で私達の様子を伺いに来ただとか。
颯爽と現れたフェイさんは、いつも通りパリッとしたスーツ姿で、テキパキと警護班の皆に昨夜の出来事を問い質していた。
相変わらず隙がないなぁ…フェイさん相手だとあっさり嘘だと見破られそうで、冷や冷やする。
「偶々居合わせてくれた神田さんのお陰ですよ!いやー、助かりました」
「ほんとほんと。気ィ失う前になんか鬼っぽいもん見た気がするけど、幽霊の類いでも見たのかなぁ…」
「鬼の幽霊って。そんなもんいるかよ」
「室長のゾンビウイルス事件も、半ば心霊沙汰だったって噂だし。割とそっち系かもしんねぇぞ?」
「ははっまっさかー」
「………」
いや、それ、半分当たってます。
確かに気絶する前に見たのは鬼だと思いますよ。
実在する、暴君という名の。
「はぁ…まぁいいわ。それなら囚人と話をさせて頂戴。それも室長に頼まれてるの」
「そうなんですか?」
「オイ、鍵」
「ああ」
あっさり。
やっぱり室長の権限となるとこうも簡単に面会できるんだなぁ…と感心してたら鍵を持った警護班がこっちを向いて、慌てて扉から距離を取った。
ま、まずいまずい。
こっそり覗いてたのバレないようにしないと。
ガチャン、
重い扉が開いて、キリリとした顔つきのフェイさんが入ってくる。
コムイ室長が来てくれた時と違って、少し緊張するな…何を言われて来たんだろう。
「少し質問したいのだけれど。いい?」
「は、はい…あのっ」
頷きかけてはっと思い出して、気付けば先に切り出していた。
「あの、私全部話しますっノアのこと…っ」
そうだ。
次に誰か来たら、伝えようって決めてた。
ちゃんと全部話して、私が教団に敵意のないことを伝えなきゃって。