My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「もしも雪くんが改善の余地なく"敵"と判断される行動を取った場合、君はエクソシストとして彼女を処せるのかい?」
「………」
「君の手で」
隙を見せないコムイの厳しい言葉。
"その手で雪を殺せるのか"
そう問われているかのようだった。
沈黙を作ったまま神田が見下ろしたのは、何も身に付けていない左手首。
しかし"枷"は変わらず在り続け、神田を縛り続けている。
数珠という物ではなく、別へと形を変えただけだ。
無機物ではなく、血の巡る彼女という者に。
意志は変わらない。
もうこの手で六幻を握らないと決めた。
唯一の同胞であり友であった、アルマを斬り捨てた時から。
それと同時に、求めるものは一つだけとなった。
"あの人"の為に。
生前の記憶が愛した、死して尚も愛した、"あの人"に会う為に。
その為ならば友の死も、何をも乗り越えていかなければならない。
「その時は…」
ぐっと拳を握り締める。
落とした視線を上げ、再びコムイを見据える神田の目。
黒曜石のような、はたまた暗い闇のような、何をも映し出さない瞳。
それは迷いなくコムイだけを貫いていた。
「俺がこの手で斬る」