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My important place【D.Gray-man】

第2章 空白の居場所



「それ以外に何もないよ」


 誰かの為に、何かの為に。
 そういう綺麗な思考を生憎、私は持っていない。

 きっぱりとそう言えば、神田の眉間の皺は寄ったまま。


「じゃあもっとマシな顔して笑え」

「すみません、神田程の美形じゃないもので」

「そういう意味じゃねぇよ」


 茶化して言えば、すぱっと否定された。

 だって、ねぇ。
 神田程の美形の笑顔に比べたら、私なんてとてもとても。
 …笑った顔、見たことないけど。


「俺は嫌いだ」


 短い言葉だった。
 たったそれだけ、それだけだけど。
 はっきりとした拒絶の言葉に、胸がツキリと僅かに痛む。


「…ごめん」


 でもなんて返せば神田を納得させられるのか。
 そんな答え見つからなくて、取り繕うように私はまた笑った。

 ごめんね。


「クゥーン」


 その空気を壊すように、切ない鳴き声が響く。
 ペロリと頬に温かい感触。
 見ればあのわんこが頬を舐めてきていた。


「ふふ、くすぐったい。…ありがと」


 まるで慰めてくれてるかのような仕草に、心が温かくなる。
 人間との関係が深い動物は、人の感情に敏感だったりするって言うから。
 優しい子だな、この子。


「そういえば泥だらけだね。やっぱ野良なのかな」


 最初は真っ黒な毛並みかと思っていたけど、よくよく見ればそれは汚れのようだった。
 随分前から野良をやってるのか、腹部を撫でればガリガリに痩せている。

 食べる物、何かあったかな…。
 そんなことを考えながら腹部から離した手を見ると、汚れが付いてしまったのか赤黒く──


「え?」


 赤黒い色。
 それはつい数日前に、任務で自分が被った色と酷似していた。
 咄嗟に鼻先に近付けて臭いを嗅げば、確かな血生臭さ。


「怪我してるの?」


 咄嗟にわんこの体を確認する。
 でも平気な顔でぱさぱさと尾を振る姿は、とても怪我してるようには見えない。

 じゃあ一体、この血は誰の。

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