My important place【D.Gray-man】
第14章 黒の教団壊滅未遂事件.
「っ…う、ん」
歩み寄って欲しいなんて、贅沢は言わない。
そう思ってたのに。
どうしよう。
神田の言葉が、凄く嬉しい。
嬉しいのに、情けなくも声は震えて。
どうしよう、また醜い顔になる。
両手で顔を隠したいのに、拘束された体はどうしようもなくて。
顔を背けたら、また無理矢理向かされてしまうかも。
「うん…、」
もう一度、返事をしてみる。
くしゃりと歪む顔。
強く歯を食い縛る。
見下ろす真っ黒な目は、そんな私に注がれたまま。
「…たく、」
溜息混じりに伸びた手が、私の視界を遮った。
「泣くなよ」
「……泣いてない…」
「似たようなもんだろ」
それは否定しないけど。
視界を遮る大きな手は私の目元を隠して、そっと包むように触れていた。
「……神田…」
少しだけ低い神田の体温。
その手はひんやりと、どことなく気持ちがいい。
こうして触れていると、段々と気持ちが落ち着いていくのを感じた。
「私…嫌いなの。弱い自分が。何かに縋って、泣き続けて。自分で努力もせずに、誰かに頼り続けようとしてた」
ピンチの時に、助けに来てくれる。映画や小説にあるような、ヒーローなんて何処にもいない。
待ってるだけで、ぐずぐずとそんな期待だけを周りに求めて、情けない子供だった。
「そんな自分が嫌いだから、誰にも見せたくない」
期待していた思いは、いつしか諦めに変わり。
諦めていた思いは、いつしか嫌悪感に変わった。
弱い自分が嫌い。
私が弱かったから中途半端にずるずるといつまでも小母さんに縋って、だから生前の両親に会うこともできなかった。
暗い地下の部屋で、両親の血濡れた名を頭に刻んだあの日。私はもう弱い自分でいるのはやめた。
そんな自分に蓋をして、生きていこうと決めた。
「私の中にあるのは、そんな自分だよ」
暗く落ちた気持ちの隙間から溢れたのは、そんな幼い自分だった。
きっと神田なら嫌うと思う。
「……」
返ってきたのは沈黙。
視界は遮られてるから、神田がどんな顔をしているのかわからない。
わからないから怖くなる。
本当の私は、凄く臆病者だ。