My important place【D.Gray-man】
第14章 黒の教団壊滅未遂事件.
「…おい、」
「ごめん、ほんとに。もう、しないから」
呼びかける神田の声に、なんとか言葉は返す。
だけど歪んだ自分の顔は、簡単に戻せそうになかった。
「謝るなら顔見てやれ。余所見すんな」
それはちょっと無理かな。
今はほんと、ちょっと無理。
だからそっとしておいて下さい。
「今はちょっと…今度ちゃんと顔見て謝るから──」
「あ?」
なんとかそう告げれば、怒りを含んだ悪態が返ってきた。
うわ怖い。
絶対今怖い顔してる…!
「テメェ…こっち向かねぇんなら無理矢理向かすぞコラ」
「っほ、ほんとに今無理! ごめんなさい! 今ちょっと色々ナイーブなんで! 放っといて下さい!」
こんな酷い顔見られたくないし、今の感情だと余計なものが吹き出してしまいそうで。
放っておいてほしい。
一人になりたい。
こんな弱いところ、見せたくなんてないのに。
「おい」
「ぃ、いや! バク支部ちょー!」
「叫ぶな殴るぞ」
それもう立派なDV!
不意に伸びた神田の両手が、背けている私の顔を遠慮無く掴む。
体はベッドに拘束されてるから抗うこともできなくて、本当に無理矢理ぐいっと強い力で向きを変えられた。
「っ!」
反射的にぎゅっと強く目を瞑る。
下がった眉に、口の端はわなわなと落ちる。
絶対に今、情けない顔してる。
見ないでよ、こんな顔。
「…おい、」
「……」
「おい、」
「……」
「……月城、」
顔を両手で挟むように掴まれて、逃げ出せない私を神田が呼ぶ。
その声は怒りを含ませたものじゃなかった。
「目ぇ開けろ。ちゃんと俺を見ていたいって言ったのは、お前だろ」
『神田ユウって人のことを、ちゃんと見ていたい』
それは通気口で、私が神田に向けた言葉だった。
ああ、なんで今それを言うかな。