My important place【D.Gray-man】
第14章 黒の教団壊滅未遂事件.
腕組みして壁に立ったまま凭れている神田は、明らかに待機の姿。
その姿から視線を外して、ぐるりと辺りを再度見渡してみる。
「…うん」
この拷問部屋、凄く目のやり場に困る。
見渡せば、大きな手術でもするつもりなのか。メスやハサミなどの小さな治療器具から、目を疑うようなドリル状の大きな器具まである始末。
「……」
キャスターの付いた小さな引き棚。
その上に並べられた、銀色に鈍く光る治療器具。
…そういえばこれ、見たことある。
何処でだったっけ。
『雪ちゃん、検査の時間だよ』
…ああ、あの時。
「……」
思い出した光景は、暗い地下の部屋。
検査と言って、肌に当てられたのは鈍く光る銀色の器具。
今更、そんなこと思い出して身震いするような自分じゃないけど。あの子が体に取り憑いて、過去を思い出したからか。
その光景が目の前に浮かんで、思わず溜息が零れた。
…嫌なこと、思い出したな。
「…神田、」
「あ?」
治療器具から視線を外して、神田に目を向ける。
「私は此処で寝てるだけだし、大丈夫だから。バク支部長達のこと見ててあげて」
なんとなく一人になりたかった。
こういう暗く落ちた気分で、誰かと接したくない。
「ワクチンを作ってくれてる、あの二人を一番に守らないと」
「……」
言えば、黒い神田の目が向いて…じっとこっちを見てくる。
じっと。
じーっと。
じぃいーっと…なんですかちょっと睨んでませんか怖い。
「…此処はコムイの実験室だ、他の部屋より頑丈にできてる」
だから平気だ、と口にしながら、壁から背中を離した神田が歩み寄る。
「それよりテメェ、またあんなツラしやがったな」
「…あんなふら?」
むにっと神田の手が、腫れていない方の頬を軽く抓る。
痛くはないけど、その顔は明らかに怒っていた。
あんなツラってどんなツラ。
また作り笑いしてたとか?
多分ゾンビウイルスに侵された時のことを、言ってるんだろうけど。
色々必死だったから、自分がどんな顔してたかなんてわからない。