My important place【D.Gray-man】
第14章 黒の教団壊滅未遂事件
思い出した光景は、暗い地下の部屋。
検査と言って、肌に当てられたのは鈍く光る銀色の器具。
今更、そんなこと思い出して身震いするような自分じゃないけど。
あの子が体に取り憑いて、過去を思い出したからか。
過去の記憶が光景として目の前に浮かんで、思わず溜息が零れた。
…嫌なこと思い出したな。
「…神田」
治療器具から視線を外して、神田に目を向ける。
「私は此処で寝てるだけだし、大丈夫だから。バク支部長達のこと見ていてあげて」
なんとなく一人になりたかった。
こういう暗く落ちた気分で、誰かと接したくない。
「ワクチンを作ってくれてる、あの二人を一番に守らないと」
言えば、黒い神田の目が向いてじっとこっちを見てくる。
じっと。じーっと。じぃいー…っとなんですかちょっと睨んでませんか怖い。
「此処はコムイの実験室だ、他の部屋より頑丈にできてる」
だから平気だ、と口にしながら、壁から背中を離した神田が歩み寄る。
「それよりテメェ、またあんなツラしやがったな」
「…あんなふら?」
むにっと神田の手が、腫れていない方の頬を軽く抓る。
痛くはないけど、その顔は明らかに怒っていた。
あんなツラってどんなツラ。
また作り笑いしてたとか?
多分ゾンビウイルスに侵された時のことを、言ってるんだろうけど。
色々必死だったから、自分がどんな顔してたかなんてわからない。
「どんなふらひてたは、わからなひんらへほ…」
「何言ってるかわかんねぇよ」
それは貴方が私の顔を抓ってるからです。
そう突っ込んだところでその言葉も理解してもらえないんだろうけど。
すると同じことを思ったのか、眉間の皺を作ったまま渋々と神田の手が離れた。
「…多分、無意識に作ってた顔だと思う。ごめん」
自分でもわからないから、回避はできなかった。
そう素直に謝れば、それ以上神田は私を責めなかった。
ただその眉間の皺は取れなかったけど。
…本当に嫌ってるんだ。
「ねぇ、神田」
そう思うと、不思議と疑問が湧いた。